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トップ杯東海クラシック 2019
南アのノリスが父に捧げる4勝目
188センチの長身を小さくたたんで泣き崩れた。
最愛の父パトリックさんを76歳で亡くしたのはちょうど3か月前の7月5日。
泣き顔を両手で覆い、しばらく立てなかった。
うずくまり、泣き続ける兄をキャディで弟のカイルさんが迎えに来た。
カイルさんが、耳元で言った。
「ほら、言ったろ? 父さんはきっと天国で見てるって」。
弟の肩を借りてやっと立ち上がると震える声で、ノリスは言った。
「この勝利を父に捧げる」。
兄弟で勝ち取った日本で4つ目の優勝杯。
涙はしばらく止まらなかった。
1打差首位で出た最終日は1番、2番と2メートルの連続バーディで、いきなり4差をつけた。だが「凡ミスが続いた」と、すぐ4番からボギー、ボギー、ダボ。せっかくの大差を吐き出し、自ら混戦に。
そのまま終盤までもつれる展開で、支えとしたのが4つ下の末弟カイルさんだった。
シングルプレーヤーだった父の夢を受け継ぎ、長男ノリスを筆頭に、三兄弟ともプロゴルファー。
「父が、僕らにゴルフのきっかけを作ってくれた。ゴルフの時には常に、父のことが頭にあった」。
昨年、病床に倒れてからは、余計に父を思わない日はなかったという。
愛する父の悲報が届いたのは、7月の日本プロ開催時だ。
「精神的に、ゴルフに集中するのが難しくなった」と、打ちひしがれた。
「こんな時に、家族がそばにいないのはつらい。この気持ちを一番わかってくれるのが、弟と思った」。
傷心を癒すため、かつては母国の南アツアーで戦い2年前までノリスのキャディをつとめたカイルさんを、前週の「パナソニックオープン」から日本に呼んだ。
「弟は”父さんならこう言うだろう”というようなアドバイスをしてくれる。感情のコントロールがしやすくなった」。
この日も窮地で「自分を信じていれば、チャンスは必ず来る」。かつての父の言葉を2人で確認しながら回った。
14番で2位に一時後退したが、すぐ15番で8メートルのスネークラインをねじ込んだ。
再び首位に並ぶと、上りの難ホールをしのいで競り勝った。
兄弟で、力を合わせて父に捧げたツアー通算4勝目だった。
5歳から16歳までラグビー選手。フルバックとフランカーで活躍し、今週の季節外れの猛暑にも、へこたれないタフな身体を培った。
今週4日金曜日はワールド杯で、母国南アの対イタリア戦に熱狂。
49対3の圧勝にも勇気をもらい「同じ国の人が活躍しているのを見ると、僕も頑張ろうと思えた」。
チームの勝利に乗じて賞金ランクは8位に浮上した。
3週後の日米共催&日初開催の米ツアー「ZOZO選手権」は、次週「ブリヂストンオープン(10月10日〜13日、千葉県・袖ヶ浦カンツリークラブ)」の賞金ランク上位7人に資格がある。
「私だけに限らず出場することは、すべてのプロの目標でしょう」。
夢の舞台は目前だ。
「今日の勝利で終わることなく、さらに優勝を重ねて目標を達成したい」。
不屈のタックルで、亡き父をこれからまだまだ喜ばす。