予選会・マンデートーナメントを突破して、大会初出場を果たした昨年は、4日間ともあいにくの悪天候だった。
今年、雲間に覗いたのが23歳にして、生まれて初めて見た生・富士山。
日本一の霊峰を見上げて、「あれに登られる方がいっぱいいらっしゃるんですよね? 凄いな~」と感心しながら自らも頂点へ駆け上がった。
「アメリカではハグするくらいですかね」と、JGTO恒例の勝利の儀式と比較しながら、「ほかの選手が応援してくれるのは嬉しいこと。本当に凄いこと」。頭から派手に水をかけられ感激した。
首位で並んで入った本戦の18番で2.5メートルのパーパットを外した時、「今週もまた2位です」と諦めて、一度クラブハウスに戻ったという。
「今年、優勝し損ねたのが何個かあったので」。
しかし、後続のパクもまたボギーを叩いた。
「また負けた、と思ってましたけど。もう1回チャンスが来た。失うものはない。やれることを全部やって、後悔のないプレーオフを」と、生還した18番で、次こそ2メートルのパットを決めきり「やっと来た優勝でしたので。本当に嬉しかったです」と、大きなアクションで喜びを表現した。
インパクトで頭が極端に沈み込む、チリのホアキン・ニーマンみたいな独特のスイングは、5歳でゴルフを始めた時のままという。
巧みな小技さばきは“マル仕込み”。
NHK「ラジオ英会話」の講師をつとめる父・泰斗さんの教育方針で、9歳で単身渡ったアメリカで、米3勝の丸山茂樹と出会い指導を受けた。
「恵まれた環境でアプローチを教えていただいた。丸山さんがいなければいま、僕はここにいない」と感謝する。
打つ前にぎゅっと両手を絞って構える独自のルーティンや、4年前からアームロックで操る中尺パターで現在の平均パット1位は内藤雄士コーチの指導のたまもの。
「苦しい時に踏みとどまれるメンタリティがある。根性あるな」と、内藤コーチも褒める精神力は、スポーツの名門IMGや、南カリフォルニア大学で培った。
大学ではビジネス学を専攻しながらゴルフ部で活躍し、オールアメリカンにも選出された。
「勉強は凄く大変で、練習もしなくちゃいけない。睡眠時間がなくて辛かった」と努力を重ねて成績優秀、学位も取得。
文武両道をやりとげ昨年5月に卒業していったん戻った。
最初のキャリアを日本でスタートさせると決意し、プロ2年目の悲願を達成させた。
この1年で食べて鍛えて7キロ増量。シャツのサイズもLから一気に2XLへ。
アメリカ仕込みの豪打で総距離7500ヤード超も苦にせず、日本屈指の難コースをねじ伏せた。
海外進出を視野に、すでに11月の欧州ツアーのQスクールはエントリーを済ませてあるが、米二部ツアーからの挑戦は今後の日本での活躍次第。
「PGAに行って、世界一を目指す」と言った。
まず日本でビッグになって、必ずまた戻る。