56歳にして、大会初出場を果たしてキャプテンに就任した鈴木亨が、今季史上初の6連勝を飾り、4年ぶり4度目のシニア賞金王に輝いたプラヤド・マークセンを勝利の要として据えたが、タイ出身の英雄は、すでにオフモード。
前・後半ともマークセンとペアを組んだ塚田好宣が、ポイントゲッターになりそこねて「マークセンに6連勝の勢いはすでになかった…」と苦笑交じりに嘆いたが、テレビ会見で得意のタイ語を駆使して先輩のマークセンの通訳をしてあげるなど、和気あいあいだった。
シニアの面々はいつも、そういうサイドネタで大会を盛り上げてくれる。
今年は新体制で臨む初めての男女シニア対抗戦だった。
吉村金八(よしむら・きんぱち)氏がPGAの新会長に就任した今年は、出場選手の顔ぶれもぐっと若返って、平均年齢は54歳。
男女ツアーにも負けないフレッシュさは、今までレギュラーツアーのトップで大活躍してきたベテランたちが、ここ数年で大量にシニアツアーに参入したことも要因のひとつにある。
だからシニアとしては、今大会初出場でも、レギュラーツアーを含めれば、4回目という選手が2人も。
うち一人の藤田寛之はつい一昨日前まで、自身26年ぶりというレギュラーツアーの最終予選会「ファイナルQT」を戦い、57位につけて、「来年はABEMAツアーでも」と決意をして、開催地の宮崎県から、今大会会場の千葉県成田市に移動してきた。
PGA恒例の決起集会でスタッフさんに、「QTで優勝賞金(200万円)が出るようになっていたことに驚いた」と、明かし、いずれのツアーであれ、各年に活躍した選手が出られるこの男女シニア対抗戦を「プロゴルファーのブロードウェー」と比喩し、「スポンサーと応援してくださるファンがいてくださる限りは、ステージに立ち続けたい」と、熱く語っていたそうだ。
年輪を重ねたからこそ発する含蓄あるコメントやプレーが、シニアのみなさんの魅力でもある。
本大会発足の2005年も選出されるなど、藤田と共にレギュラー、シニアどちらでも出場経験を持つ深堀圭一郎も「その年、良いゴルフをしていないとここには呼んでいただけない。出場させてもらえてありがたかった」と、プレーの合間にしみじみと言っていた。
若手をうならせる技術やプレーももちろんだ。
初出場を果たした52歳の兼本貴司(かねもと・たかし)は、ツアー2勝のレギュラー期から飛ばし屋で、今も衰え知らず。
藤田と組んだ前半も「兼本くんが飛ばしてバーディ獲って、最後私が後ろから寄せてパーを取る」と攻守のコンビネーションも抜群に、男女ツアーを震え上がらせていた。
サービス精神も旺盛だ。
出場リストに名前もないのに会場に現れたのは、今年8月にシニア入りしたばかりの“新人”宮本勝昌。
なぜか、女子ツアーのチームカラーの真っ赤なパンツで現れ「体はシニア、心は女子」と、冗談を言ったが本当は、発足の2005年から病気や災害、家庭環境に苦しむ子どもたちのためのチャリティをうたう今大会のために、「何かできることはないか」と自らかって出て、PGA主催のジュニアイベントでお手伝いをしながら、シニアチームを応援。 チャリティ活動
ツアー通算12勝を誇るベテランが、下支えとして大会を盛り上げていた。
開会セレモニーでは真っ赤なお鼻や、トナカイのかぶりもので登場した“シニア・サンタ”の面々は、いつも勝敗度外視で、夢と希望と笑いを届け続ける。