最後は先週の全米オープンみたいな感動のVシーンになった。
大西魁斗(おおにし・かいと)と並んで入った最終18番。ピン右5メートルのバーディパットがカップの底を叩くよりも早く号泣したのは、組んで2年目になる同級生キャディの芳賀和希(はが・かずき)さん。
「僕の初優勝なんです」と、涙でぐしゃぐしゃ。
キャディ歴は、まだ5年ほど。
「経験も浅くて、最後のバーディパットはラインもあんまり分からない。下り早いからそれだけ気をつけようって。でも、そんなに簡単なパットじゃない。それを、ユウキが沈めてくれた」と、ぼろぼろ泣いた。
「今週は宿も一緒で、ごはんも毎日一緒。いつも僕にすごくよくしてくれて。ユウキと一緒に勝つのが目標でした」と、涙が止まらなかった。
1差の2位タイから出た最終日は特に後半から上位が次々と20アンダーを越え、激しい伸ばし合いの大接戦となった。
懸命に追いつ、並びつ迎えた16番パー5のチャンスホールで3メートルのバーディパットを逃して、芳賀さんにひそかに諦めがよぎる。
「ダメかもしれない…」。
しかし、次の17番パー3で2メートルにくっつけバーディ。
ついに、首位と並ぶと芳賀さんの緊張はピークに達した。
18番ティに行くまでに「こんな経験したことがない」と、訴えると稲森は、「カズキが緊張しているのが面白いよ」と、言って笑っていた。
「泣く準備はできてるよ」と冗談めかして伝えると、稲森も「泣かしてあげるよ」と請け合い、150ヤードの2打目を9アイアンでピン5メートルのチャンスに。
バーディで決着した瞬間に、「緊張が一気にほどけて…。泣いてしまいました」と芳賀さんは照れながら、それでもまだ泣き足りずに泣いていた。
この日唯一のボギーを叩いた9番で、稲森は「しゅん」となったという。
でも「大丈夫、次行こう、頑張ろう」と声をかけ、背中を押し続けてくれたのが芳賀さんだった。
「彼は僕の気持ちを上げ上手。いつも前向きで、後ろ向きなところを見たことがない。支えられた」と芳賀さんに感謝。
本人は過去3勝とも泣いたことがなく、「最近泣いたのも、去年(12月)の結婚式くらい」。
徹底したポーカーフェイスもさすがに芳賀さんのあまりの泣きっぷりに「僕も泣きそうになりました」と、危うくもらい泣きするところだった。
感泣の親友の肩をしっかりと抱き寄せながら18番グリーンを上がると、前選手会長で、幼なじみの時松隆光(ときまつ・りゅうこう)が待っていた。
昨年の第1回大会で立ち上げに奔走した大親友の迎えが嬉しくて「げんちゃん…」と、思わず感極まった声が出た。
「どの選手も自分がホストプロという気持ちで臨む大会で、僕も少しでも盛り上げたいと頑張りました」と、選手会主催試合を自らも大接戦で演出し、最後は、先週の「全米オープン」を制したフィッツパトリックのV場面をほうふつとさせる感動の友情シーンで締めくくった。