「どうあがいても予選落ちは予選落ちです。ぼろぼろになりました」と、翌日は現地で1日寝込むほど落ち込んだ。
「描いていたよりも、世界のレベルは果てしなく高く、差を思い知らされた」と、傷心の帰国。
でも、「そのまま引きずっているようでは全英オープンに行った意味もない」と、タダでは起きない。
第90回の完全優勝は、青木、尾崎、中嶋のAONらと名前を並べる8人目(9例目)の快挙である。
また22歳と246日での本大会制覇は史上最年少(※いずれも1973年のツアー制度施行後)。
平田憲聖(ひらた・けんせい)が、5年シードのビッグタイトルで、初Vの5月「ミズノオープン」に続くツアー通算2勝目を達成した。
苦手を自認する前半アウトの6、7番と9番の3ボギーはどれも3パット。
2位と1差の通算10アンダーから8アンダーに後退し、「情けない」と、メゲかけた。
「追われる側から追う側へ。難しいコースでは一つのバーディが、大きな意味を持つ」と、再び火が点いたのは、2人の存在。
「中島選手や蟬川選手が上位に上がってきているのをみてこのまま負けるのは悔しい、と」。
アマ期から追い続けてきた同学年のライバルを着火剤とし、14番では「デジャブ」も起きた。
「打つ場所は違ったけど似たようなピン位置で、初日は20メートルが入った。いいイメージがあり、今日も同じような15メートルが入ったので、同じことが起こってキャディと笑った。あれは、振り返っても大きなバーディでした」と、起死回生の首位獲りに成功。
珍しく、大きなガッツポーズが出た。
15番で4メートルを沈めて連続バーディとし、2差で入った17番では5メートルのチャンスも決まると、得意の後半4つのバーディで、前週の最下位から一気に優勝へ。
賞金ランクも金谷、中嶋に次ぐ3位に浮上。
「全英オープンでの経験を活かせたかな、と思います」と、先週の悪夢も完全払拭だ。
初の最終日最終組も、「海外選手の真似してみた」と、朝の練習場でイヤホンを聞きながら好きなヒップホップでリラックス。
スタートの1番での、地元のジュニアたちとの手つなぎ入場は、自身も経験者という。
小学時代に地元関西の試合でタイのマークセンと行進し、「緊張して、ロープの中を歩いて楽しかったというのは覚えています。今度はあの子たちが僕たちを見てプロになりたいと感じてもらえたら、凄く嬉しいこと」。
夢と希望を引き継ぐ使命がある。
先週の「全英オープン」で、何が一番驚いたといって、前週日曜からどこもかしこもぎっしりの大観衆だった。
あんなに悔しかったメジャーでの残像を胸に、「将来的にはゴルフ人口を増やしたいですし、見に来てくださるファンももっともっと増やしたい。自分のプレーで、それが出来たら」。
メジャー帰りの勝者は心の成長も著しい。