右足義足の吉田隼人さんと予選ラウンドを回った清水大成(しみず・たいせい)は、「いやもう、ほんと昨日が雨じゃなかったら・・・」と、ご本人にかわって悔しがった。
「球足が強くて、アプローチとかも凄く上手くて」と、天候が回復したこの日は、本来のゴルフを随所で発揮した吉田さんを賞賛。
「ほんと、昨日は大変だったと思います」と、改めて初日の悪天候を労った。
吉田さんのバッグを運んだ有迫隆志さんも、左腕機能障害のチャレンジド・ゴルファー。
9月にオープン競技を控えており、吉田さんのそばで自分も勉強を・・・と思っても、キャディは初体験だった。
「昨日は雨で、余計にやることいっぱいで。選手のサポートにも注力できなかった」と、有迫さんにも過酷な2日間だった。
「もしまた機会があれば、ぜひ一緒にラウンドお願いします。上達の秘訣を教えていただけたら嬉しい」と、吉田さんと一緒に指導を志願。「ぜひぜひ!」と清水の快諾に、お2人ともとても嬉しそうだった。
2日目は「82」。
通算24オーバーで、吉田さんのツアー初挑戦は、2日間で終わったが、予選通過は不可能な状況から始めた第2ラウンドでは2バーディを奪うなど、最後まで全力プレー。
晴れ間が戻ったこの日は、メーカーさんに特別に作ってもらった右足だけ半パンツを着てきたのは「僕の個性」と胸を張る義足を、同じチャレンジド・ゴルファーのみなさんに見せるため。
個々に機能が異なる義足をどのように動かして好ショットにつなげるか。
注目ポイントをあえてプレー時に惜しげもなく見せることで、向上のヒントにつながると吉田さんは考える。
ちなみに、使用クラブは市販品だが、左足1本の吉田さんは体のローテーションがしずらい分、手のローテーションが強くなるのでその防止に太グリップを装着するなど工夫をしているという。
「きょうは清水さんも、時松さんもスコアを伸ばされたし、緊張感の中で素晴らしいプレーをそばで見せていただいて、本当に感謝しかない」と、改めて同組のプロ2人と、主催者に礼を述べた吉田さん。
高校時のバイク事故で右足を失い、リハビリでゴルフを始め、昨年は、左腕1本の小山田雅人さんに続く、2例目のティーチングプロ試験で合格し、今年は障害者ゴルフの世界ランキング1位を目指して、特訓中。
8月には、またアメリカの国際試合に立つ。
目下の目標は、自身もプロを目指すきっかけとなった憧れの片足ゴルファー、チャド・ファイファーさん(米)に勝つこと。
プレー後の清水との談笑でも「今回、ツアープロのみなさんと回らせていただいた経験を生かして、もっともっと強くなりたいと思っています」。
ツアープロ以上の熱量で語った。