「キャディさんが、上って、下って、最後までスライスを見ていいと思うよ、と言ってくれたひと声で入った。キャディさんに感謝です」と、気持ちよく向かったはずの後半10番ではラフを渡り歩いてボギー。
「パー5のチャンスホールで稼ぎ切れていない。そういうことをやっていたらまた1打届かないので、そこはしっかり反省」と、気を引き締めなおして最後18番では再び関根キャディと力を合わせて2メートルのバーディ締め。
珍しく、ガッツポーズを握った。
「普段は、澄ましてますけれど」と、照れた。
「入れてガッツポーズをする、と思って打った」と、心境の変化を明かした。
「自分を鼓舞するためにも気持ちを出していきたい」という昨今のキャラ変は、いつも応援してくださる恩人に見せるため。
福岡県に本社を置くドラッグストア「コスモス」の宇野会長と会食した際の話題は、最終日を2打差の単独首位で出ながら、米澤蓮(よねざわ・れん)に3差で敗れた先月の「横浜ミナト Championship ~Fujiki Centennial~」でのこと。
初めての最終日最終組だったが前夜は、睡眠もとれたし、翌朝1番のティーショットも思ったより緊張なく打てたし、アドレナリンの計算もできた。
心の成長を感じられたからこそ、宇野会長が不服を訴えたのが、V争いに向かう際の阿久津の心構えだ。
「勝ちたい、ではなく勝たなきゃ、という気持ちでやってこい」と、力強い言葉で背中を押されて来た。
「今週は、気持ち入っているな阿久津…くらいの気持ちで観ていただけるとありがたい」と、週末もガッツプレーを自らに強いるつもりだ。
栃木県宇都宮市の出身だが、静岡県三島市での日大4年間を経て、2016年のプロ転向時に当時の所属コースに合わせてここ兵庫・神戸に越してきた。
本コースからなら、車で30分ほど。
「第二の故郷と思っている」という愛着の地は、2015年の「日本アマ(兵庫県・廣野GC)」ではベストスコアの「64」でメダリストを獲ったり、大学4年時に初制覇した「日本学生(兵庫県・鳴尾GC)」がプロ入りを決意するきっかけとなったり、小野東洋GC(兵庫県)で行われた一昨年の本大会3日目には自身初のホールインワンを達成するなど「絶対に縁がある」という確信の地。
「ここで勝たなければならないという使命感を持ってプレーしたい」。
自らに強烈な圧をかけ、プロ9年目の初優勝に臨んでいる。