2018年から男子下部ツアーの冠スポンサーとしてスタート。そこからコロナ禍を経て7年もの間、インターネット中継を軸に男子下部ツアーを盛り上げてくれた。
数多くの選手がABEMAツアーを経てレギュラツアーで活躍しているが、中でも久常涼をはじめ、大西魁斗や桂川有人、生源寺龍憲らは文字通り『ABEMAから世界へ』というキャッチコピー通り世界への扉をABEMAツアーから切り開いてくれた。男子ツアー全体のレベルアップはもちろんのこと、個々の選手の技術レベルや意識改革にABEMAツアーが大きく貢献したことは揺るぎのない事実だ。
ABEMAスポーツ局・局長で、ABEMAツアーのスタート時から中継に携わっている古川雄太氏に7年間の歴史に幕を閉じた今の思いを聞かせてもらった。
「7年間という長いようで短かったような感覚です。初めて中継したときには、ゴルフをどうやって盛り上げればいいのかというイメージが湧かなくて。その時にすごく選手に助けられた経験がありました。そう考えると、選手を含め多くの方から感謝しているとおっしゃっていただくんですが、ぼくらこそ選手にお世話になったし感謝しているという気持ちが第一声ですね」。
ゴルフという初めての環境の中で、かつ男子ゴルフの人気復活という使命のもとプレッシャーもあったはず。ただ、そんな難題を紐解こうとした時に、ある意味で追い風となったのは『先入観の無さ』だった。
「ゴルフに関してはぼく自身が業界として関わってこなかったこともあり、ゴルフ業界を知らない自分にとって失礼ながらアスリートって感じじゃないんだろうなって思っていたんです。でも、初めて日大の合宿に行かせてもらった際に、ゴルフ自体にアスリートな人達が多いこと。しっかりしている人も多いし面白い人たちも多い。アスリートとしてしっかりしている人たちの多さが衝撃でした」。
徐々に湧いてきたゴルフをどう盛り上げるかのイメージ。ABEMAツアーでは「ABEMAチャレンジャー」としてアマチュアを含めた多彩な選手を出場させたり、「ベストリアクション賞」を設けたり、様々な新しい仕掛けを取り入れてきた。そこにはゴルフ業界に対する古臭い先入観が無く、男子ゴルフの面白さや凄さを、純粋に世の中に伝えたいという思いだけが突き動かしていたと言える。
「男子は女子とは全く別物のゴルフが見られてすごく面白いと感じたんですが、逆にこれをいかに世に広げられるかがぼくの責任だなと思っていました。それしかずっと考えてこなかったですね。見せ方によっては女子よりも全然面白くなるとずっと思っているし、今ももちろん思っています」。
古川氏はスポーツを見る楽しさについて、メジャーリーグの大谷翔平選手やオリンピックに出る選手らがそうであるように、一般人ができないことをやっている姿を見られることがスポーツを見る楽しさだと言う。男子ゴルフはまさにそれに値するものだと。まだまだやれることがある。そんな思いもありつつ、男子ゴルフが今後向かうべき姿についてアドバイスを求めた。
「ゴルフに限ったことではないと思いますが、中継だけが盛り上がってもしょうがないと思っていて、どんなスポーツも現場に来て楽しんでもらうのがベースで、そこで熱量が上がって、現場に行けない時、試合を見られない時に中継で見られたらすごくいいなと思っています。その瞬間が生まれるのがスポーツの中継としてあるべき姿だと思っています。ゴルフも下部ツアーに関しては無料ですし、レギュラーには無い近さで観ることができます。才能ある若手も多いですし、そういう凄い選手がいるんだということをゴルフファンの皆さんには現場に行って感じ取って、楽しさを知ってもらいたいなと思います。そこが全ての始まり、スタート地点なんじゃないかなと思います」。
今回、古川氏も着用しているポロシャツは、最終日にABEMAのスタッフ全員が着用した特別仕様。胸には7年を意味する「ABEMA TOUR」のロゴがプリントされている。このオリジナルポロを手がけたのは中西直人が主宰するアパレルメーカーだ。ABEMAツアーを選手として、スタート時から盛り上げてきた中西だが、今回の最終戦は出場が叶わなかった。解説陣のゲストとして出演する案もあったが、中西は自分にしかできない形で恩返しできればと感謝の気持ちを込めてポロシャツを作ったとのこと。中西だけではなく、この7年間、ABEMAツアーの中継があることが、全ての出場している選手にとって励みになったことは間違いない。
古川氏は「自分たちが感謝している」と話してくれたが、選手たちは本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。カメラに撮られることでプロとしての自覚が芽生え、その緊張感の中でこそ、自分のゴルフができなければと気づいた選手も多い。その証拠に、以前は下部ツアーからレギュラーツアーに上がってもすぐに戻ってくるケースが多かったが、その悪しき流れはこの7年間でかなり解消された。むしろ、そのままレギュラーツアーで活躍できる選手が増えてきた事実がある。
ABEMAツアーが培ってきたこの7年間の実績は必ず将来に引き継いていかなければならないし、さらに発展させていかなければならない。この7年間が、いつの日が男子ゴルフ発展の礎を築いたと言えるようにしなければならない。
〜7年間本当にありがとうございました〜