Tournament article
宇部興産オープン 1999
大会1日目2位の田口康祐
2日間を通算12オーバーで予選落ちこそしたものの、その2日目に「もうどうにもならないくらいの風が吹いた。それ以来、よっぽどじゃないと風は、そんなに気にならなくなりました。むしろスライスやフックをかけて、風にぶつけたりするショットが、好きになってしまったくらい。あのとき、風のつきあいかたをおぼさせてもらったような気がしますね」(田口)。
本場の風に吹かれながら、懸命に戦った経験が生きている。
8番ショート。ピンまで13メートルの右カラーにこぼれたバーディパットをしずめるなど、前半のハーフで快調に伸ばして3アンダーの首位タイ。
「明日以降、なだれみたいに落ちていくかもしれないのは怖いけど、とりあえず気分いいです」。
ハキハキと、思ったことを順序良く話せる姿勢が印象的だ。
高校を卒業した1985年、某大手企業の関連会社で、システムエンジニアとして働いていた。だが、「高卒者は、どんなにがんばっても出世できない」とのいきどおりを感じて3年半で先行きを決めないまま退社。しばらく求人誌の会社でアルバイトをしてすごした。
接客業、営業職をこなすなど社会経験を積んできた礼儀正しさが、表情やしぐさからにじみ出るようだ。
だが、その会社で契約社員として働くことを勧められたとき、一念発起した。
「このままではいけない。何か成し遂げたいと思って1990年1月1日にプロゴルファーになることに決めた」という。
そして、7年の研修生生活ののちに、1996年のプロテストに合格。
長い道のりだったが、「いつかぜったいに通ると信じていた」という田口。 次に胸に期するべきことは、「いつかぜったい勝つ」という決意だろう。
★田口康祐の話
「昨年参加した全英オープンの予選会では、とにかくガムシャラに、1打1打に打ちこんだ記憶があります。とにかくあの風は、口では言い表せられないほど凄まじかった。
あの風の中では、飛ばすことはまったく意味をなさないんです。とにかく、ひとまずフェアウェーに置いて、そこからアイアンしっかりパーの取れる箇所に乗せられること。それがいかに大切なことかがあの経験で分かりました。
風の中のプレーは、スピン量をコントロールして、球をぶつけていくように打つ感覚が必要です。これは、経験がなによりものを言うと思いますが、日本のコースではなかなかこの感覚を習得できませんよね。
イギリスに行くのに、予算をきりつめたためにシンガポール経由でいったもので、 27時間も飛行機でかかっただけに、ぜったい予選会を突破してなんとか本戦に出る!と頑張りましたが、そんなに甘くありませんでしたね。また何度でも挑戦したい。あそこはスゴイ場所です。遠くまで、でかけていく価値のある場所です。
先週から、全英オープン予選会なんですよね。…今週、優勝して全英へ…なんて大それたことは考えていませんが、なんとか上位に食い込んで、出場権を得たいと思っています」