Tournament article
ブリヂストンオープン 1999
「プロゴルファーを支える人々」連載第2回
選手のさまざまなクラブの悩みに答えるためには、「その選手以上に選手のことがわかっていなくては、いけないのかもしれません」とは、クラブ技術歴40年という、内田治夫さん(60歳=写真)だ。
「たとえば…」と、ブリヂストン契約選手の尾崎直道を、例にあげて言う。
「直道さんの悩みは、とても感覚的なものが多いんです。…もっとも、プロ選手は誰でもそういう傾向にはあるのですが、直道さんは特にそれが強くて、ボクのところにやってきて身振り手振りで訴える。『なんか、手がこうなって球があっちにいくんだ』とか、『なんかここが、こうおかしな具合なんだ』というような表現で、『だから、なんとかしてね』と、持って来られるです。それでその言葉を聞いて、ボクも感覚的にクラブのライ角が悪いのか? バランスか? シャフトの、フェースの向きが悪いのか…どこが、何が原因でそういうスイング、球筋になってしまっているのか、瞬時に理解してあげなくてはいけない。でも、直道さんのスイングのクセや球筋が頭に入っていないと、きっと途方にくれてしまうんでしょうね」(内田さん)。
普段から、選手とふれあい、スイングのクセ、球筋を頭に叩き込んでいるからこそ、要求に応えられる。熱心に選手の言葉に耳を傾け、より深く、その人を理解しようとする姿勢。
クラブにほんの少しでも不安を残したままコースに出ていった選手は、絶対にいい成績など残せない、と内田さんは思っている。だからこそ時には、開催まで夜を徹して全力で調整にあたるのだ。
内田さんたちの手塩にかけられて、クラブは徐々に選手の手になじみ、やがて、その選手にしか使いこなせない、極上の1本が完成されるのだ。
そして、その繰り返しによって、選手と内田さんの間には確かな信頼関係も結ばれていくのだろう。
「でも、信用されればされるほど、ボク自身にかかってくるプレッシャーも大きくなっていくんですけどね…。決して失敗は許されないわけですから」(内田さん)