Tournament article
日本オープンゴルフ選手権競技 2002
横倒しになった松の木
佐藤が、グリーンの右サイドに、上がったときだ。
“バキッ・…!!ザザザザザ〜…”
背後の激しい音に振り返ると、そこには、信じられない光景が広がっていた。
ほぼ300ヤード地点の左ラフから、フェアウェー方向に、横倒しになった松の木。
ついさっき、第2打を打って、自分が歩いてきたあたりだった。
「ラッキーでした。それがティショットやセカンドを打つときだったら、動揺してミスしていたかもしれない…」。
高さ15メートル以上。蔦が絡み合う幹は、直径約1メートルで、大人ひとりが、両手を回しても足りないくらいの立派な松。
それが、地上約5メートルのところで2本に枝分かれしたあたりから、えぐれるように、へし折れていた。
「台風で倒れた、とかいうのは聞いたことがあったけど、今日みたいな天気の良いときに折れたのは、ほんと初めての経験でしたね」と、佐藤は目を丸くするばかり。
1956年、この下関GCが開場するまえから自生していた松林は、そのほとんどが樹齢150年を超え、倒れた松も「間違いなく、百数十年以上はいっていました。かなり老朽していたのでしょう」(西尾辰昭グリーンキーパー)。
直前の、予兆はあった。
佐藤によると、セカンドショットを打ち終わった前後から、「カーン、カーン、と幹にボールが当たるような音がしていた」という。
その数分後の、ハプニングだった。
倒れるほんの少し前まで、観戦中のギャラリーが大勢、松の下を歩いていた。
自身のプレーに差し障りがなかっただけでなく、「ケガ人が出なかったのも、本当によかった」と、その点についても、佐藤はホっと胸を撫で下ろした。
写真下=6番パー4で倒れた松の木。すぐの撤去は不可能で、フェアウェーまではみ出した枝がプレーに差し障る場合の救済処置を設け、ゲームは続行。幸い、救済を受けた選手はおらず、木は、全選手が6番ホールを終了したあとすぐ、いくつかに裁断され、コース外に搬出された。