Tournament article
マンダムルシードよみうりオープンゴルフトーナメント 2003
『いきなり、こんなところで戦えるなんて』ツアー4戦目のルーキー、砂入清史が2位タイ
広島県出身。戸坂中学時代には、ジャンボが抜群の相性のよさを誇る広島オープン(現・ウッドワンオープン広島ゴルフトーナメント)の会場に、何度も足を運んだものだ。当時、大人気を博したジャンボブランドのクラブを好んで使っていた時期もある。「僕らはみんな、ジャンボさんに憧れて育った」。そんな選手と同じ組で回ることになって、光栄という思いよりも、どうしても恐れの気持ちのほうが大きくなる。「ジュニア時代の友達だってなんと言うか・・・。まさかボクが、そんな経験をするなんて、みんなも思ってもないはず」。
しかも砂入は、ファイナルクォリファイングトーナメント37位の資格で今シーズンようやく本格参戦を果たし、まだツアー出場4戦目という選手だ。「それが、いきなりこんなところで戦えるなんて」。
開幕前に、知人から譲り受けた32インチと短めのパターで「肘のあまりが少なくなって振りやすくなった」と、169センチの小柄な体格にマッチしたおかげとはいえ、いきなりの優勝争いには戸惑うばかりだった。
「ラウンド中ですか? 挨拶だけは僕からしますけど、プレー中にジャンボさんに話しかけるなんてとてもとても・・・。それより、スタートホールでいきなりOB2発くらい打っても不思議じゃない・・・そう思ってしまうくらい今、緊張しています」最終日のラウンド風景を我知らず脳裏に描いて、前日からすでに、砂入の表情は終始、こわばっていた。
実は、このオフ。選手生命も危ぶまれる怪我をした。年末の大掃除をしていて、太いパイプを両手でひねってまわそうとした途端、プチン、という音がした。左手の付け根の軟骨の損傷だった。翌年のツアー参戦に備え、打ち込み練習をやりすぎて、その箇所に疲労がきていたのが原因だった。
医者は「野球選手ならば、ほぼ絶望的だったろう」と言った。クラブを振ることはおろか、ただ、腕を振る動作にさえ激しい痛みが走って、1ヶ月間のギプス生活。
せめて動かせる場所だけでも鍛えておこうと、トレーニングなどして気を紛らわせるのだが、何度も不安な思いにかられた。「正直、もうだめだろう、とも思った。ほんとうにしんどかった」。
最終日のビッグネームとの優勝争いは、そんな苦しい日々を乗り越えて念願のツアーデビューを果たしたことへの、ご褒美だろうか。
「ほんとにすんごく緊張すると思うけど、明日は1打1打大事に戦って・・・。この経験を、必ず今後に生かしたい」と、ルーキーは自らに誓った。