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アコムインターナショナル 2003

73ホール目のプレーオフに挑んだ倉本昌弘、心には爽快さだけがあった

プレーオフ1ホール目の18番ホールは、この8年間の集大成だった。「ティショット、セカンドとも完璧な球が打てた。練習の成果が出た」。そんな倉本 を、大ギャラリーが後押しする。
残り167ヤードの第2打。右からのアゲンストを計算して、約7メートルグリーンを外 して打ったショットはうまく風に乗った。倉本の目には、球はピンそばに落ちたよう に見えたが、グリーンがやや打ち上げているため、セカンド地点からは正確な位置が 確認できない。

だからどれほどの距離に球がついたかは、その瞬間、沸き起こった大歓声がバロメー ターだった。しばらく鳴り止まない拍手に、「かなり近くに寄った」と確信したの は、倉本ばかりではなかった。それは、いまから第2打を打とうとするジャンボも同 じだった。

「倉本は、OKバーディの距離につけたと思った」(ジャンボ)。

しかし、実際には倉本のバーディチャンスは、プレッシャーのかかるピン右3メート ルを残していた。それ を知らず、倉本より近くに乗せようと勝負に出たジャンボのセカンドショットは大き くショートして手前バンカーに転がりこんだ。

ティショットを右に外していた宮本とジャンボ、両者ボギーでゲームオーバー。8年 ぶりの優勝インタビューで倉本は、「この勝利は、みなさんが味方してくださったお かげなんです!!」まっさきに、ギャラリーへの感謝の気持ちを口にしていた。

3日間、「曲がる気がしない」と絶好調だったティショット。この日最終日の9番ホー ルで、ふいに不安が頭をもたげた。「左にOBするのではないか・・・」倉本の心に、8 年分のプレッシャーが襲いかかっていたのだ。

左を怖がったティショットは右ラフへ。そこからの第2打もグリーン手前のラフに入 れ、第3打もまたグリーン奥の深いラフだ。4打目のアプローチはヘッドがラフに負け て開いて入り、球が真横に飛んでいった。ダブルボギーで、はじめにあった4つの貯 金はまたたく間に消えた。

そのあとも、ショットを曲げるのではないか、という懸念だけは消え去ってくれず、 11番、13番でボギーを打った。とうとうジャンボに並ばれて、15番、ジャンボのバー ディでいよいよ逆転を許した。「もうだめだ・・・」といったんはあきらめた勝負。

それでもなんとか耐えてプレーオフまで持ち込むことが出来たのは「最後まで応援し てくれたギャラリーのみなさんの後押し」と、良い意味での開き直りだ。
通算13アンダーのままなんとか72ホール目を終え、プレーオフに挑むときの倉本の心 には、爽快さだけがあった。

「これで2位以下はない・・・。気楽にいこう!」。再び18番のティグラウンドに立った 倉本には、過去幾度も対戦してきて、性格も癖も知り尽くしているジャンボ尾崎の心 の動きを読んで、それを楽しむ余裕さえあったのだ。

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