Tournament article
サントリーオープンゴルフトーナメント 2004
加瀬秀樹 8年ぶりの『ゆうしょうまちがいなし』最終日、後半11番ホールで受け取った息子からの手紙
視線の先には、長男・哲弘君(8歳)。8年前、ツアー3勝目をあげたときはまだ、文子夫人の手に抱かれていた。
物心ついてからはよく、頬を膨らませながら哲弘君が言ったものだ。
「そんな小さいときのこと、覚えてないよ」。
だからこそ、いまこうして目の前で、優勝シーンを見せられたことが何より嬉しい。
優勝インタビューで、少し泣いた。
「この8年間、つらかったですから・・・」。
声を震わせた父親を、ひとり息子が真剣な表情で見上げていた。
首位タイでスタートした最終日も、苦しい戦いだった。
ショットは絶好調。何度もチャンスにつけながら、パッティングが決まらない。9番、10番、11番・・・。3ホール続けて3メートル前後のチャンスを外したとき、哲弘君が駆け寄ってきた。
くちゃくちゃに丸めた走り書きのメモ。「18番で読んで」と、言われていたが我慢できず、すぐにその場でシワを伸ばした。
鉛筆で丁寧に描かれた優勝カップの絵と『ゆうしょうまちがいなし』の文字。
再三、チャンスを逃して「先走りかけていた心」をグっと引き戻した。
「他の選手も伸びていない。我慢して、14番、15番ホールのどちらかで勝負だ」。
その14番で2メートルのバーディパットを決めて、2位グループを突き放したのだった。