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ABC チャンピオンシップゴルフトーナメント 2004

井上信(まこと)が、ツアー史上19年ぶりの快挙達成へ・・・「これを逃すとあとがない、くらいの気持ちでいく」

その瞬間、戸惑いと、喜びが混ざったような複雑な笑顔。ぎこちないしぐさで、歓声に答えた。最終18番。「とにかく、2パットで行ければいい」という7メートルのイーグルパットが、ど真ん中からカップに沈んだ。通算14アンダーは2位と2打差。マンデートーナメントから勝ち上がった選手が、いま、初優勝のチャンスを迎えている。

マンデートーナメントとは開催週の月曜日に、出場権を持たない選手を集めて本戦切符を争う予選会のことだ。
そこで66をマークしてトップ通過を果たした井上が、今度は本戦の最終日を前に、再びトップに立っている。
「また、ここに、こうしていられることが嬉しい」インタビューの席で、素直な気持ちをあらわした。

これまでにも、優勝のチャンスは何度かあった。
今年6月の三菱ダイヤモンドカップ。
7月のアイフルカップ。いずれも2日目に首位に立った(三菱はタイ)。
だが、3日目に必ず崩れるパターン。「何がいけないんだろう…」ずっと悩んできた。その答えが、この日ようやく見つかった気がしている。

いつも、「がっついて、気合が入りすぎてた」。スィングにも、力みが出て失敗してきた。「心の体力がなかった」。
この日も、3番でボギー。次の4番でもティショットを大きく引っ掛けた。「また、いつものパターンか…」。そう思った瞬間、かたわらのキャディに「まあ、ゆっくり行きましょうよ」と言われて思い出した。
目下の課題は、自慢の飛距離を捨てて、「常に、6割程度の力で軽く振っていくこと」だった。

たちまち冷静さを取り戻し、ピンチの4番でバーディを取り返すことができた。「気持ちのコントロールが上手くいった」。初シード入りにも、大きく前進した。

過去、マンデートーナメント通過者が本戦で優勝した記録は、2例しかない。79年フジサンケイクラシックの佐藤昌一と、85年三菱ギャランのブライアン・ジョーンズ。井上が、もしこのまま勝てば、ツアー史上19年ぶりの快挙だ。

自身初の最終日最終組に、「緊張は、・・・絶対にすると思うけど、これを逃すとあとがない、くらいの気持ちで思い切っていく」。井上が、最後の鬼門を前に覚悟を決めた。


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