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日本プロゴルフ選手権 2004

国内ツアー14勝、米ツアー1勝のデービット・イシイが復活へのビッグチャンス、首位タイ

"ホールアウトするなり、48歳が思わずはにかんだ。
「こんな良いスコアは、う〜ん…覚えがない。ざっと10年ぶりくらいと言ってもいい かも!!(笑)」。
今大会での優勝を含む、年間6勝をあげた87年には、日本ツアーで外国人選手とし て、はじめての賞金 王に輝いた。ほか、国内ツアー通算14勝。米ツアーでは、地元開催のハワイアンオープン(90年) で1勝している実力者も、2000年に賞金ランクによるシード落ちを喫して以来、下降 の一途をたどっていた。
生涯獲得賞金ランク25位内の資格で、復活をもくろむも昨年は、出場21試合中、予選 通過わずか4試合 という惨状。主に「パットの不調」で、持ち味だったステディなプレーは、すっかり かげをひそめてい た。
「…ノーボギーのラウンドも、5年ぶりくらいじゃないかなぁ!?」。実際は、2003 年のアイフルカッ プ2日目に、ボギーなしの2バーディを記録しているが、この日の6バーディ66の首位 発進にいちばん 驚いていたのは、ほかならぬ本人だったのだ
きっかけは、今年1月に参戦したハワイアンオープンで、親友と興じたパッティング コンテストだった。
アマチュア資格での出場ながら、中尺パターを器用に使いこなすその友人に完敗し、 悔し紛れにそのパターをちょっと拝借。
見よう見まねで使ってみると、フォロースルー時につい上体が起き上がってしまう癖 が、一気に解消さ れたのだ。
この中尺パターで打つときのイメージを、普通の長さのパターでも再現できないかと 試行錯誤を重ね たイシイは、ついにオリジナルのスタイルを完成させた。
スタンスを極端に広げてアドレスすると腰が落ちてグっと安定し、「中尺で打つとき のように、低い姿勢で構えられる」(=写真上)。相撲の四股ふみにも似たそのスタ イルは、「こうすると、スムーズにストロークできるんだ」と、すっかりイシイの定 番になりつつある。
この形でパッティングするようになって、今シーズンの予選落ちはまだ1回だけ。 「フィーリングも去 年より、ぜんぜんいいんですよ」と、カタコトの日本語で静かに微笑んだ。
荒天で大会初日が中止となった今大会。最終日に36ホールという過酷な条件が待ち受 けている。「45歳 もすぎた僕には、1日2ラウンドはつらいね」と苦笑したが、トップスタートは99年の 三菱ギャラントーナメント初日以来。
「ベストを尽くすよ」。久々に訪れたビッグチャンスを、生かしたい。"