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サントリーオープンゴルフトーナメント 2006

井手口正一「割って入ります」

生い茂るラフの先に待ち受けるのは、面積が小さくて、固く締まった高速グリーン。
「そこに、上から落としてボールを止めたい」と井手口は考えたが、ロングアイアンでそれを実現するのは容易ではない。

そこで今週、4番アイアンの変わりに入れたのが9番ウッド。
「女子プロみたいで恥ずかしくないかって? ぜんぜんですよ! むしろ4番の飛距離で6番の高さが出る。ゴルフがすっごく楽で、ほんとうに助かってます」。

この日も、10番パー4で残り210ヤードからピン左2メートルに乗せた。続く11番パー3(205ヤード)は、手前5メートルにつけて3連続バーディにつなげたばかりか、この日3日目はボギーなしの65。

潔い選択が、自身初の最終日最終組へと導いた。

昨年、二部ツアーのチャレンジトーナメントで2勝をあげて、賞金ランク1位。今季ツアー前半戦の出場権を手に入れた。
現在、930万5800円稼いで賞金ランクは61位。
今週、最低でも単独3位以上に入れば、初シード入りへの大きな足がかりとなる。
余計なプレッシャーがかかるのを嫌って、控えめな目標を口にする選手も多い中、井手口はきっぱりと言い切った。

「優勝を目指したいと思います」。

チャレンジトーナメント転戦中は経費を浮かせるために、ほとんど地元・熊本にも帰らず、ワゴン車で寝泊りしていた。
いまでも、節約グセは抜けない。
先週のフジサンケイクラシック2日目。仲間には見栄をはって「ホテルに泊まった」と言ったが実は、コース近くの“道の駅”に車を止めて夜を明かしている。

そういう生活を、2度と味合わなくても良いように・・・。
「そういう、ハングリー精神が僕にはある」という。

最終日の声援はおそらく、大方が優作の初優勝を願うものとなるだろう。
しかし、井手口はひるまない。
「そこに割って入ろうと思います」。
堂々と宣言した。

井手口正一(いでぐちしょういち)プロフィール
1972年11月5日生まれの33歳。熊本県出身。
シニア認定プロの父・一幸さんのてほどきでゴルフを始めた。
名門・近畿大学に入るも「簡単になれそうだ、と勘違いした(笑)」。
一幸さんの勧めもあって、3年で中退してプロの道を目指したが、甘くはなかった。
5回の受験ののち、プロ転向を果たしたのは99年。
そのあとも稼げない時期が続いていた。
昨年、二部ツアーのチャレンジトーナメントで2勝。賞金ランク1位の資格で、前半戦の出場権を獲得した今年は、伊澤利光に直談判。
「毎週、一緒に練習ラウンドしてもらえるようお願いして、トップの技をいろいろと勉強中!!」という33歳。
JCBクラシック仙台で8位タイ、セガサミーカップで10位タイにつけるなど上り調子で迎えた自身初の最終日最終組。
目指すは初シード入りばかりか、大きくツアー初優勝。一幸さんが見守る前で、いっぺんに2つとも手に入れるつもりだ。

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