17番で、絶好のチャンスを外した。３メートルのイーグルパット。意気消沈して次のティグラウンドに立ったそのとき。
応援に駆けつけた妻・めぐみさんの笑顔が見えた。
腕の中には、昨年12月に生まれたばかりの長女・心優（みひろ）ちゃんの姿。
悔しい気持ちがたちまち消えた。すぐに気持ちを切り替えた。
18番で8メートルのバーディチャンスをど真ん中からねじこんだ。

「･･･そりゃあね、あの子の顔を見た限りは入れなくちゃ！（笑）」。
待望の第一子が、いま一番の原動力だ。

昨年、賞金ランク82位でシード落ち。
悪い流れのまま臨んだ12月のファイナルＱＴでも失敗して、今年はツアーの出場権がない。

どん底に落ちてなお、希望を捨てずに済んだのは、愛しい家族の存在があったからこそ。
主催者推薦選考会を突破して、出番を得た今大会でしっかりとチャンスを生かした。
３位タイに食い込んで、翌週のつるやオープンの出場権を手に入れた。
地元・関西で行われる同大会にはすでに、主催者推薦で出られることが決まっていたが、それを使わなくても良くなった。
「自力でチャンスを掴むことができて。かなり自信になりました」。
シード復活に賭ける男が、最高のスタートを切った。

• 中川 勝弥