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三井住友VISA太平洋マスターズ 2007

今年開場30周年の記念大会に大奮闘御殿場コースのグリーンキーパー 久保田一彦さん

伝説のグリーンキーパーから仕事を受け継いで初年度の今年は、久保田さんにとって勝負の年!
ここ御殿場コースには、伝説のグリーンキーパーがいた。母体の太平洋クラブ全体を総括するスーパーインテンダント(コース管理の最高責任者)でもあった日比野忠行さんが手塩にかけて作るグリーンは、海外のトッププレーヤーたちまでもが毎回「オーガスタ並みの仕上がり」と賞賛をあびせ、ジャパンゴルフツアー選手会のアンケートで幾度も「ベストツアートーナメント」に選ばれ、昨年は「グリーンコンディション」部門で1位になった。

30年にわたり、コース管理に従事した日比野氏の口癖は「いつか、マスターズを越えたい」だった。高い志のもとに作られるグリーンは毎年、高い評価を受けて、御殿場にこの人ありとまで言われた。
そんな日比野氏が惜しまれつつ、その職を退いたのは昨年2006年3月。

その意志を受け継いだ現・グリーンキーパーの久保田一彦さんは言う。
「日比野さんがここまで築き上げてきたものを壊すわけにはいかない・・・。そりゃあ、そういうプレッシャーは常にありますよ」と、苦笑した。

北海道の農業団体「ホクレン農業組合連合」に勤めていた久保田さんが転職し、ここ静岡県の御殿場コースにやってきたのは10年前のことだ。
その5年後にキーパーの職について以来、日比野氏のもとでまさに手取り足取りの指導を受けてきたが、いよいよ独り立ちすることになって、その重圧は尋常ではなかった。

特に今年は35周年大会。またコースは開業30周年を迎え、例年にもまして失敗は許されなかった。
開催前から「相当の気負いがあった」と久保田さんは言う。

コース作りは自然との闘いだ。台風、長雨、酷暑・・・。「何が起きるか分からない」という状況に、常に久保田さんの頭にあったのは、やはり日比野氏の教えだった。
何度も繰り返し諭された中で、特に強調して言われたのは「絶対に芝を悪くさせるな」と「常に先を読め」ということ。

芝は生き物。ひとたび病気を患ったら、元の状態に戻すのに尋常ではない時間を要する。“復旧”にかかる間に、さらに向上するチャンスも奪われていく。
「そのために片時も芝から目を離さないこと。毎日、細かく観察を続けて、おかしいと思ったらすぐに対処にかかること。悪くとも“風邪”の段階でとどめること。“肺炎”を起こしたらその時点でもはや手遅れだから、と・・・。そのために、絶対に手は抜くな、と。そりゃあ、もう口をすっぱくして言われました」と、久保田さんは振り返る(・・・翌10日土曜日の掲載に続く)。