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三井住友VISA太平洋マスターズ 2008

加瀬秀樹は「もう行くしかない」

ボールを追う視線に鬼気迫る。賞金レースが激化するこの時期、同時に激しくなるのがシード権争いだ。しかし加瀬は自嘲気味に「まだ惜しいなんて、言えるような位置でもない」。現在、賞金ランクはボーダーラインの上位70人にもほど遠い96位だ。

「人がどうのこうのというよりも、もう、行くしかない立場だから・・・。悔いの残らないように、自分のプレーをするだけだから」という言葉にも、自然と力がこもる。

なりふり構っていられない。
良いと思う物は、迷わず取り入れる。
まずはボールだ。
前日のプロアマ戦。前の組で回っていた細川和彦が、「良く止るショットを打っていた」。
聞けば、スリクソンの「Z-UR」を使っているという。
さっそく細川からボールを借りて、残り3ホールで打ってみた。
「よし、これで行こう」。
即断が、奏功した。
「今日は久しぶりに飛んで止る良いボールを打っていた」と、専属キャディの清家充広(せいけあつひろ)さんが証言する。

そして、パターだ。
実は、今季一番の不調がグリーン上だったが、それも“伝家の宝刀”を取り返してたちまち息を吹き返した。
48.5インチのオデッセイの長尺パターは、今ではもう見られなくなった形だ。
2年前に、弟分の甲斐慎太郎に貸してやったきりそのままになっていたことを思い出した。

「そういえば貸してやった途端、慎太郎は札幌オープン(ツアー外競技)で優勝してたっけ・・・」。
しかも甲斐は、今年初シード入りを決めたばかりか夏のバナH杯KBCオーガスタでツアー初優勝をあげた勢いのある選手だ。

「乗ってるヤツのところにあるパターだからきっと入るぞ!」と直感して今週、会場入りする前に連絡を取った。
藁をもすがる思いで「おい慎太郎、あれを返して。今週、持ってきてくれと・・・(笑)」。
それがピタリとはまった。
御殿場の高速グリーンも、面白いようにパットが決まった。

しかしもちろん、初日の好スタートにも薄氷をふむ思いには変わりない。
「明日以降も自分の世界に入りきってゴルフする」。
今年12月に49歳。
シニア入り目前のベテランが、ハチマキを締め直した。


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