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マンシングウェアオープンKSBカップ 2008
16歳のディフェンディングチャンピオンは…
「苦手なラインではなかった。3回のうち、2回は入っていたライン」。
決めていれば、この日7アンダーは通算1アンダーにして、決勝に進めるはずだった。
テレビインタビューで、「昨日があったから、今日のスコアがある。今日の結果は自信になる」と、気丈に言った。
1日3つのダブルボギーを打って、大きく出遅れた初日。
それでも、「明日は、別人のゴルフがしたい」と、話した。
「見に来て良かったと言ってもらえるゴルフをする」と誓ったディフェンディングチャンピオンは、たった1日でゴルフを立て直してきた。
スタート前に、きゅうきょドライバーのシャフトを45.25インチから45インチのものに変えた。前日、あれだけ右に曲げていたティショットも徐々に安定を見せて、ツアーでは初めてバッグに入れたというクリークでチャンスを作り、詰めかけた8157人のギャラリーの期待に応えた。
15番、18番でイーグルトライ。
特に、5番は気持ちがこもった。18ホール中、クラブハウスからもっとも遠いパー5はしかも、いくつかの急な丘を越えたところにある。
それにもかかわらず、最後まで途切れることのなかった人の波。
勾配のきつい坂道も、根気よくついて歩いてくれたファンへの精一杯の恩返しだ。
10メートルの長いパットをねじ込んで、「いいもの見せてもらえた、と言ってもらえた。本当に、嬉しかった」と振り返る。
同時に見えてきた決勝進出への可能性は、続く6番でバーディを決めて一気に高まった。
それだけに、上がりの3ホールは惜しかった。
7番でカップに蹴られ、8番はわずかにショート。狙い澄ました最終ホールは本人と、大ギャラリーのため息とともに、わずかにカップをそれた。
連覇を狙った大会で、2打足りなかった。
これで、3試合連続の予選落ちだが「試練ではない」と、石川は言った。
「僕には、まだ3試合連続で予選通過できる力はない。日本一なんかまだまだ遠いって、神様に言われてるってこと」。
むしろこの日は、ボギーをひとつに抑えられたことを喜んだ。
次週、26日の月曜日は大阪府の茨木カンツリー倶楽部で全米オープンの日本予選が控える。
「その前に、最高のゴルフが出来て幸せだった。今日のゴルフは自信になる」と、どこまでも前向きだった16歳は、インタビューの最後に、つい本音がこぼれ出た。
「終わったかあ…」と、うつむき加減に苦笑い。
「あと2日、プレーがしたかった」。
後ろ髪引かれる思いを抑え、思い出の地を後にした。