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UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ 2008

宍戸に靴職人が登場

写真奥から斉藤さん、大村さんと西森さん。「僕らみんな、靴が大好きなんです!」。真剣な表情で靴と向き合う姿勢には、その気持ちがにじみ出ている。
大会3日目の1番ホール。満員のギャラリーにまぎれ、昨年覇者の片山に熱い視線を送る人がいた。…といっても、その人が注目していたのは彼のゴルフというよりむしろ足元。
白地にブルーが鮮やかなゴルフシューズで力強く地面を蹴り上げ、ティショットを放った瞬間だった。

「ああ、あの靴は僕が磨いたんだな…って、ちょっと感動しちゃいましたね」と照れくさそうに笑ったのは、靴磨き職人の西森真二さんだ。

「“おしゃれは足元から”じゃないですが、靴はすべてにおける要。靴が好きでたまらないんです」という西森さんが大村賢哉さん、斎籐融さんらと脱サラで、都内に靴磨き専門の「天草製作所」を立ち上げたのは今年2月だ。

そのあとすぐに今大会主催のUBSの目にとまったのは、靴磨きの出張サービスがメインというユニークさだけではない。
どんなにくたびれた靴も、まるで新品のように美しく磨き上げるその丁寧な仕事ぶりが高く評価されたからこそ、今大会の出場選手の靴磨きのオファーが来たのだ。

普段は本革のドレスシューズをメインとしている西森さんたちは、本戦までにさっそくゴルフシューズの磨き方を大研究。

底面にたくさんのスパイクがついた靴を、いかにしてピカピカに仕上げるか。
試行錯誤を重ね、準備万端でいざ大会週を迎えたのだった。

その手順はこうだ。
まず、靴にへばりついた芝や泥を専用の工具ですべて取り去る。
次に、デリケートクリームと呼ばれる保湿剤をまんべんなく刷り込み潤いを与え、余分な油分を取る。
最後にミトン型のシューポリッシャーで磨き上げて乾燥機にかけて仕上げる…。

1足につき10分、2足で20分。
スピーディかつ、輝くばかりの仕上がりに感動した片山は、ボギーなしの66をマークして8位タイに浮上した大会2日目に、キャディの石井恵可さんを通じて西森さんたちスタッフにこんなメッセージを寄せた。

「靴がとってもきれいだったから、今日は良いスコアを出せました。ありがとう!!」。
ゴルフを始めたばかりという西森さんも、この言葉にすっかり感動してがぜん片山の大ファンに。
翌日から大村さんと、斉藤さんとで片山の靴を誰が磨くかで、一悶着もあったそうだ。

いよいよ迎える最終日。
プロゴルファーにとっては、まさに靴はスイングの要だ。
「靴磨きを極めたい。靴職人のステイタスを高めたい」という西森さんたちスタッフがプライドをかけて磨き上げた靴で選手たちは、この日も緑の芝を踏みしめしのぎを削る…!!