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長嶋茂雄 INVITATIONAL セガサミーカップゴルフトーナメント 2008
踊るすし!!
560ヤードの最終18番パー5。
ピン左7メートルのバーディパットをねじ込んで、拳を握り、「つったかたー」とその場をぐるぐる行進し、パターを杖に腰を振る。
そして改めてガッツポーズ!
北の大地のさわやかな青空のもと、超ロングバージョンの“すしダンス”で会場を盛り上げた。
一時は13アンダーまで伸ばしながら、17番でダブルボギー。
10アンダーとスコアを崩したが、このバーディで通算11アンダー。
2位と3打差の単独首位に、ギャラリー振りまいた明るい笑顔。
それとは裏腹に、心は沈んでいた。
「今日は、泣きそうになりながらプレーした」。
地元・埼玉県立蕨高校野球部時代の監督、佐藤明広さんが、49歳という若さで亡くなったと知らせが入ったのは前日2日目の夜。
いまは同・春日部工業高の野球部・顧問をつとめていた恩師とは、卒業後もずっと交流があった。
たまに電話をかけてきて叱られる。
「いい加減に優勝しろよ、この野郎!」。
乱暴な言葉も愛情の裏返し。
そして、上位で終った翌週は「俺の言うとおりにやっているな」と褒められて、オフにはゴルフに誘われることもたびたびあった。
交通事故ということだが動転していて、原因を詳しく聞き返すことさえできなかった。
突然の訃報に動揺しながら、思い出されたのは高3の夏の大会。
地区予選の2回戦までコマをすすめた翌日の新聞に、監督の談話として「石垣の集中力はものすごい」と書いてあった。
「監督は、俺のことをそんなふうに思ってくれていたんだ」と、ひそかに嬉しかった気持ちは今でも覚えている。
「そうだ、ゴルフでも大事なのは集中力」。
18番で、いったんはカップの寸前で止まったバーディパットが最後にポトリ・・・と吸い込まれたのも「先生の力があるのでは、と」。
監督の遺言と、その存在の大きさを噛みしめながらのこの日の18ホールだった。
今週から道内2連戦だが今大会が終ったら、いったん本土に戻る。
29日火曜日の通夜に参列するためだ。
「監督に良い報告がしたい」。
急逝した恩師にツアー初優勝を捧げたい。
いつも明るい選手が珍しく、しんみりと話した。