8月2日(木)、中嶋常幸と星野英正が、昨年7月6日に行われた宮城県牡鹿郡の女川町立女川第ニ小学校へのツアーメンバー10名の訪問に続き、『ゴルフで宮城県を元気に!』のスローガンのもと、宮城県亘理(わたり)郡の山元町にて行われたスナッグゴルフのイベントに参加した。
このイベントの開催は、今回、山元町の小学校5校(坂元小学校、中浜小学校、山下小学校、山下第一小学校、山下第二小学校)全校にスナッグゴルフが導入されたことで、審判員を伴わないゴルフを通じて、子どもたちに、協力、誠実、我慢、思いやり、礼儀など、クォリティの高い価値観・道徳観を養ってもらうことで、日本の未来の担い手である青少年の健全育成に寄与することを目的としている。
山元町は仙台駅から車で南に約60分の海岸沿いに位置し、福島県と隣接する宮城県最南端の町。昨年3月11日に起こった東日本大震災では、津波による大きな被害を受けた地区の一つで、町内5校の小学校のうち、2校は今もなお、近隣の小学校と同居する形での生活が続いている。
真夏の太陽が照りつける中、イベント会場となった山元町立山下中学校のグラウンドには、町内の各小学校の児童約40名が集まった。
まず始めに、スナッグゴルフスクールセットの贈呈式があり、中嶋、星野の両選手と社団法人日本ゴルフツアー機構(JGTO)会長の海老沢勝二から、山元町長の齋藤俊夫氏と代表児童2名へ用具が手渡された。そしてプロの紹介があり、日本タイトル7冠、ツアー48勝、シニア4勝、賞金王4回の中嶋プロは、「今日みんなはスナッグゴルフをやりますが、将来、ゴルファーになっていってほしいですね。僕はゴルフを始めてもう少しで50年近くなりますが、君たちのお父さんよりも年が上です。僕はゴルフをやりながら日本だけでなく世界のいろんな所に行き、いろんな職業やスポーツ選手の友達ができました。君たちは大震災というすごいことを乗り越えてきて、そしてここから世界にはばたいていけるような、そういう人たちになってほしいです。今日1日楽しく、そしてよかったなぁと思えるようにがんばっていきましょう」と挨拶した。続いて、宮城県で生まれ育ち、東北アマ5連覇、アマチュアタイトル52冠、ツアー3勝の星野は、「今日は少しの時間ですが、みなさんにスナッグゴルフを一生懸命教えますので、スナッグゴルフの楽しさを覚えて、今後みんなが大人になっていくうえでゴルフをずっと続けていってほしいという気持ちです」と子どもたちに笑顔を向けた。
そしていよいよ実技講習がスタート。用具(ランチャー、ローラー等)の説明があった後、まずプロがデモンストレーションでフルショットを披露。中嶋、星野ともに前方に張ってあったネットを軽く超え、その迫力あるショットを間近で見た子供たちは目を輝かし、「すごーい!ナイスショーット!」と口々に叫んだ。
次は自分の番と、さっそく子供たちは8グループに分かれ、パット、チップショット、ピッチショット、フルショットの基本練習を、額に汗を光らせながら一生懸命に取り組んだ。プロは順番に各チームを回り、「上手だね〜」「ローラーはゴミをほうきで掃く感じで打ってみよう」「よし10点狙っていこう」と子供たち一人ひとりに声をかけ、何度も目線を子供の高さに合わせて腰をかがめ、丁寧に手取り足取り指導していた。練習の成果を試すゲームを行うと、子供たちの熱気は最高潮に。チームごとに「がんばれ!」と元気いっぱいの声援が飛び交い、優勝したチームはご褒美にプロとハイタッチができて大喜び!
そして実技講習の最後には、ジャンケンで選ばれた山下小学校4年生の菱沼夢生(めい)さんと山下第二小学校6年生の我妻龍河(りゅうが)くんが2打のハンデをもらい、それぞれプロと直接対決。龍河くんがあわやホールインワンというスーパーショットを放ち、プロが一瞬冷やっとするシーンもあったが・・・結果は両者ともに引き分け、楽しいスナッグゴルフ体験会は終了の時間を迎えた。
プロに教えてもらった子供たちからは、「スナッグゴルフは難しいけど、とても楽しかった」「プロは教え方がとても上手だった」「またプロと対戦してみたい」との声が寄せられた。
2時間の実技講習を終えた中嶋は「ゴルフは今日やったスナッグゴルフよりももっと面白いしもっと楽しいです。僕には小学2年生の孫がいて、この夏休みに一緒にゴルフするのを楽しみにしています。みんなもできればお父さんお母さん、知り合いのおじいちゃんとゴルフをやってください。それから、もしこの近くでプロの試合があったらぜひ見に来てね。今日はみんなの顔が見られて嬉しかったです。」とメッセージを送った。
宮城県出身の星野は、震災直後、ゴルフ合宿をしていた宮崎から実家に電話をしたが、電話口で物が崩れ落ちる音や聞いたことのない母親の悲鳴を聞くなど辛い経験をしているが、今日の山元町の元気な子どもたちを目の当たりにし、「もちろん震災のことは忘れてはないと思うが、今を楽しく過ごしているのを見て、逆に僕らが元気をもらいました。今日は少しの時間だったけれど、みんなと触れ合えてとても楽しかったです。このスナッグゴルフを通じて、みなさんがゴルフを楽しんで、いずれこの中からプロゴルファーを目指してプロになって、その時まだ自分がプロゴルファーでいたら、お互いに本当のゴルフで勝負できたらと思います。これからもゴルフを続けていってほしいです。」との想いを語った。
午前の部が終了し、昼食の時間には、ハウス食品のカレーが子どもたちにふるまわれた。
今回、東北福祉大学ゴルフ部のボランティアさんが、子どもたちのために朝早くから現地入りし、駐車場誘導・整理やカレーライスの準備・給仕など、本イベント運営にご協力いただきました。