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東建コーポレーションカップ 2000

「僕の優勝は、みんなに夢を与えると思う」芹澤信雄

大会を協力下さったボランティアの方々と、東建コーポレーションイメージキャレクターの藤田まことさん(芹澤の右隣)と山本譲二さん(左)と。
「最後のパットを打つ前、『これをはずすとプレーオフだ。プレーオフになったら俺は絶対負ける。そしてもう一生勝てない』と思ったんです。打つ前は手が震えてるし、入れたあとは、とても立っていられませんでした。『もういいよ、よくやった』って、自分にいって、思わずしゃがみこんでた。
 低迷していたときは、自分を見失い、何がなんだかわからなくなっていました。飛ばすためのスイングに変えようとして、どんどん深みにはまっていきました。ドライバーはどんなにやっても思ったところに行かなくなってた。40歳を前にしてトレーニングをはじめて、それが逆に疲れるばっかりで、ボロボロになって、成果もでませんでした。いじりだしたスイングを元に戻そうとしたけど、もう自分では立てなおすこともできなくなっていました。デビッド・レッドベターの教室に、何度か通ったりして、次第に自分本来のスイングを取り戻しはじめたとき、杉原(輝雄)さんにこう言われました。『オマエは、飛ばないけど、セカンドでスプーンを持てば、パーオンできるじゃないか。まだまだ勝てるぞ』。
 杉原さんのおっしゃるとおりでした。
 このコースは、飛距離が出る選手に有利で、歴代優勝者も飛距離の出る選手ばかりで、そんななか、僕みたいな飛ばない選手が勝ったのは、ほんとうにすごいことだと思うんです。今回の僕のこの優勝は、非常にたくさんの選手たち、そしてアマチュアの方々に、夢を与えるのではないでしょうか。飛ばす人間ばっかりが勝つと、飛ばすことだけがゴルフみたいになってしまうけど、『芹澤さんみたいに飛ばなくても勝てるんだ』って思えれば、頑張る子達も出てくるんじゃないかな。 今週は、クラブをオンプレーンに乗せることを心がけてプレーしました。飛距離より、ラインを出すため、右手の角度を変えないように気をつけてショットしました。 今の40歳代の選手たちが低迷しているのは、時代の流れもあると思います。クラブがパーシモン、メタル、チタンとどんどん新しいものが登場して、新しいものから使い始めた若い子たちはそれにすぐ馴染んで信じられないくらい飛ばすけど、パーシモンに慣れ親しんだ選手は新しいものに馴染めなくて、ダメになっていく…そんななか、ジャンボさんはやっぱり別格なんです。
 以前の僕はまったくの感覚派だったんです。あげて下ろせば、まっすぐ飛ぶ。パットは打てば入る。…でも、ある日、ジャンボさんに『芹澤のパーパットは世界一だ』って言われたときから、僕はパットまでおかしくなった。
 というのも、その日以来、『どうすればパットがうまくなるか』という取材攻勢を受けはじめ、そうやって改めて『どうやって打っているのか』と聞かれると、考え出しちゃって、なんだか型にはめるようになってしまって…。感性を生かしたパットができなくなってしまったんですね。誉められることで、逆にこけてしまったんです(笑)。
 でも今回は、僕の持ち味のパットで勝てて本当に嬉しい。、まだ僕でも優勝できるんだ…って感じです。今週は、ベスト10くらいに入れればいいと、優勝を意識しなかったのがよかったのでしょうか。最後のバーディパットは、心臓が飛び出そうなくらい震えてましたが…本当に本当に嬉しい。嬉しすぎて、なんにも言葉が浮かばないくらいです」

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