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ANAオープン 2009

中嶋常幸「石川遼的にコメントすれば…」

4勝の中嶋をしのぐ今大会最多優勝は、ジャンボ尾崎の7回。しかも、2002年にもぎ取った7つ目の勝ち星は、55歳と7ヶ月29日の最年長Vだった。

この日同組で回ったリーダーの谷口徹が中嶋をして「輪厚の帝王」と呼び、「すみからすみまで知り尽くしている」と舌を巻いたが、特にベテランにチャンピオンが多いことについて本人も、「ここは経験が生きるコースだから」と、分析した。

特に、上空を舞う風の読み。

「ティグラウンドに立てば、ここはどういう風が吹いているのかが分かる。体に染みこんでいるものがある。自然とやるべきことが見えてくる」。

5番のチャンスホールも、どんなショットが必要か分かっていた。右からフォローの風は、「左の林の2番目の木をめがけてストレートに打っていけば良かった」し、またその通りにも打てたのだ。ただひとつ誤算は、「30年も経てば、木が成長して高くなっていたこと」だった。

「若い飛ばし屋ならキャリーで290ヤードは余裕で超えて行けるが、僕ら世代の飛ばし屋は、もうあとは『神様お願い抜けさせて』とお願いするしかなかった」。

しかし「神様は、横を向いてしまった」。思いは届けられず、ボールは木に当たって林の中へ。第2打は出すだけ。
「3もある4を狙っていけるホールでパーに終わった。これが今日、流れを引き寄せられなかった要因」と、谷口の5つのリードを許して悔しがる。

ボギーなしの69は「けっして悪くないけど、あと2つ3つくらいは伸ばしたかった」と後悔しきりだ。
これだけ差をつけられては、めったなことは言えそうにない。
その一方で昨年は2位と相性も良く、しかも思い入れの強い大会で今年も盛り上げたい気持ちは一杯ある。

その間でせめぎ合う。
「本来の俺と、石川遼的な俺。どっちの気持ちが聞きたいか」と、会見場で報道陣に逆質問。
「本来の俺なら、“明日は谷口よ、勝手にしてくれ”だ」と、苦笑いで開き直った。
しかしすぐにかしこまり、「石川的に言えば、“明日は1打差でも差を縮めて、自分のプレーを精一杯します”だな」と、ニッコリ笑った。

このオフに痛めた左肘。
「本来の俺なら“腕の痛みがなかったら、今日はぶっちぎってるよ”だ」。
そして、石川のコメントを見習えば「“腕の痛みは関係ないです”と、言わなきゃいけないところだけれど」。

オフは同時に脇腹も痛め、満身創痍の54歳が立ち向かうのは独走態勢を築きつつある41歳のリーダーと、「大好きな輪厚」での大会5勝目。ツアーは通算49勝目。

これまでの48勝で何度も大逆転劇を演じてきただけに、「明日はとにかく目の前の1打に集中すれば分からない。あとは勝利の女神にお願いをするしかない」と言って、会見場の椅子から立ち上がった。

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