記事

2004 アジア・ジャパン沖縄オープン 2005

8打差の大逆転!!宮里聖志が、地元・沖縄で涙のツアー初優勝

夢を見ているようだった。

加瀬秀樹がバーディパットを外した瞬間、弟・優作が、抱きついてきた。
「やったな!」と言って、父・優さんと固い握手。
大粒の涙を浮かべた母・豊子さんに抱きしめられたとき、長男・聖志もあふれ出す涙を押さえられなかった。
確かな家族のぬくもりに、ようやく「これは現実なんだ」と分かった。

この日最終日にテレビ中継のリポーターとして、コース入りしていた妹・藍さん。
大勢のギャラリーにもみくちゃにされながら、18番グリーン横のアテストテント前で2人、落ち合った。

目が合った瞬間、大きな瞳から、ボロボロと涙をこぼしながら藍さんは、兄の太い首にむしゃぶりついた。
声にならない声で、「おめでとう!」。
いまや警備員なしで、ひとりでコースも歩けないくらいの有名人となったゴルフ界のスーパーウーマンも、聖志にとっては「目に入れても痛くないほどかわいい妹」。
いっこうに涙が止まらない様子の藍さんの頭を、思わずいたわるように撫でていた。
照れたように妹は、兄の頭を撫で返してきた。

お互いに泣き笑いのまましばらくの間、じっと見つめあい、喜びをかみ締めあった。

地元・沖縄で、しかも、今年3月にあげた自身の結婚式以来、久しぶりに全員が揃った家族の前で、実現した初優勝。

厳しい父、優しい母。
人一倍努力家で完ぺき主義の弟、19歳にして女子ゴルフ界の未来を背負う妹…。
「誰が欠けてもダメ。みんなそれぞれに役割がある」大切な家族の目の前で、いつもみんなを祝う立場だった宮里家の長兄が、主役になった。

「自分は勝っても、絶対に泣くタイプじゃない」と、タカをくくっていたが、それは大きな思い違いだったようだ。

特に、これまで苦労をかけてきた両親のことを思うたび、涙が止まらない。

大会主催者と、コースの那覇ゴルフ倶楽部と、そのグリーンキーパーと、ボランティアのみなさんと、最後まで大きな声援を送ってくれたギャラリーのみなさんに感謝の気持ちを述べたあと、

「父と母がいなければ、今の僕はありませんでした。…ほんとうに、ほんとうにありがとう!」。

両親へのあふれる思い。
涙で、声にならない声を懸命に振り絞り、生まれてはじめての優勝スピーチを締めくくった。

関連記事