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カシオワールドオープン 2010
まずは予選ラウンドを終えて、明暗を分けたシード権争い
逆転のシード入りを目指して、“圏外”で初日を迎えた選手たちが、予選落ちをすれば、おのずと次週の予選会「ファイナルQT」に行かざるをえなくなる。
津曲泰弦(つまがりたいげん)は84位タイで決勝ラウンドに進めなかった。3年連続のシード権の保持に失敗した。
「今年は前半戦で特に、ゴルフが噛み合わなかった」。序盤から、シード権のことを、意識しすぎたせいもあったかもしれない。
それも途中で吹っ切れたものの、エンジンがかかるのが遅すぎた。
遅れを取り戻せないまま、いよいよラストゲームを迎えたが、ここでもやはり、2008年のドライビング王は、その高いポテンシャルを発揮しきれなかった。
「シード落ちしたら、そう簡単には這い上がって来られないですよね?」と187センチの長身も、しょんぼりと縮む。
周囲の励ましを得て、気力を振り絞る。「後半は良くなってきたので。それを励みに、なるようになると思って気持ちを切り替え、頑張ってみます」と、ファイナルQT会場の茨城県のセントラルゴルフクラブに向かった。
そのほか、やはり大会は84位に終わった五十嵐雄二と、同91位の髙橋竜彦も、津曲と同様にシード権を失った。
ただし、この2人が津曲と違うのは、ツアー優勝による、複数年の出場権を持っていること。いずれも、ツアー選手権の優勝で、猶予はある。ファイナルQTには行かなくても良いが、プロのプライドといってもいい賞金シードに潜り込めなかったことには、悔しい気持ちに変わりない。
昨年の「UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ」でツアー初優勝を飾った五十嵐は、むしろ「去年より、今年のほうがゴルフの状態は良かったのに・・・。ゴルフって、本当に繊細なスポーツですね」と、苦笑した。
「絶不調・・・というわけじゃないのに、スコアが出ない。それでも来年もツアーに出られるわけだから。その点では凄く感謝していますが、やっぱり悔しい。腹の中は、煮えたぎっていますよ」と、打ち明ける。
「この世界でやるには、相当の実力がないとダメということ。このオフで頑張って・・・。伸びしろがどこまであるかは、自分でも疑問ですが」と、自嘲の笑みで「でも、まだ42歳。年齢は問題ない。出直して、頑張ります」と力こぶしでコースを去った。
五十嵐と同じく2006年の同大会でツアー通算2勝目をあげて、5年シードを持つ髙橋竜彦はなんと、今年は予選通過0という惨憺たる成績に終わった。「ゴルフのレベルが、全体的に落ちている」と自覚はしていても、どうにも調整がつかないまま、1年が終わってしまった。
「何をやってもスコアにならなかった」。そんな状態で、試合に出続けることは相当、苦しかったはずだ。本人も、たまに冗談交じりで「もうやめたいよ」とこぼすことも多く、どん底の中を、まさにもがきながら必死で戦い抜いた。
「やっと、終わった」と、むしろこの日は予選落ちに、ほっと安堵の息をつく。
賞金レースを繰り広げる若い選手たちの勢いと、自らの現状を照らし合わせて「キョンテや遼くん、勇太のような選手が活躍する一方で、俺みたいな選手もいる。それもスポーツ界の、ひとつの面白さなのかな」と、浮かべた笑顔も弱々しかった。
今季のラストゲームに駆けつけた妻の葉月さんと実家のある福岡に向かう車に乗り込みながら、「これからまた、一からやり直しです」と、振り絞る声で、来季の復活を誓った。