記事
Thailand Open 2013
谷原秀人が日本人最高位に
攻めに攻めた結果の結末だ。次の17番のパー3は、ティショットを左のバンカーに入れて1.5メートルのパーパットが残った。大事な場面でのボギーに、最終18番は、ますます気合いが入った。
「絶対にバーディしかないと思って」。
グリーン右のラフに外した3打目は、入れることしか頭になかった。
「入ったかなと思ったんスけど」。絶妙のアプローチはわずかにカップをそれて、行き過ぎた。1.5メートルの微妙なパーパットも決めきれずに連続ボギーで、結局10位タイに沈んだ。
振り返れば、前日3日目。
試練があった。16番。池越えの2打目は、状況からいけば間違いなくグリーンに着弾するはずだった。
それが、池の向こうの巨大な広告看板に当たって、まさかの池ポチャ。
日本ツアーなら、ありえないことだ。飛球線上に、看板は絶対に存在しない。
しかし、ワンアジアとの共同主管で行われたこの「タイランドオープン」の、ホストツアーはワンアジア。
規定やルールはもちろん、コースセッティングや運営方法は、当然こちら主導で開催される。
ワンアジアではスポンサーの露出が何をおいても重視されるといい、看板もテレビ中継にあえて映り込むように設置するのが普通という。
それでも、JGTOのスタッフが説得してプレーの妨げになると思われる看板は、出来る限り撤去をしたのだが、谷原は運が悪かった。
それまで、日本人の最上位者として2打差で首位を追いかけていた谷原は、ダブルボギーで大きく失速したのだ。
しかし、それでも「まあ、しょうがないですよ」と、谷原はさばさばとしていたものだ。
開催直前に、日本とアジアの運営方法の違いについて話題になった際にも谷原は、きっぱりとこう言ったものだ。
「日本とアジア。やり方が違っていて当たり前。むしろ、日本でやっているようにいくと思うのが間違いで、それが嫌なら出なけりゃいい」。
アジアでの試合経験が多い谷原にとってはここで起こるすべてが特別なことではなく、むしろ「何もかもが完璧にいくわけじゃない」と思うのが当然のことで、泰然自若で挑んだ最終日の猛チャージだった。
日本人として最上位のトップ10に食い込んだが「あと、2、3人は入ってもいいはず」。
谷原には、強い思いがある。
「日本選手も絶対的にやれるはずなんです。レベルは俺たちのほうが、間違いなく上なわけだから」。
それでも、リーダーボードを独占出来なかったのは、「やっぱりグリーンとアプローチかな。こちらの芝に慣れていないという部分は絶対にある」と、力説した。
「技術はあるはずなんで。あとは慣れ。こっちの選手は、いろんなコースを知っているんで。日本選手もこういう試合にどんどん出て、慣れていくしかないんです」。
次はジャパンゴルフツアーアジアシリーズの第2戦「インドネシアPGA選手権」。
「タイでもこれだけ出来たのだから、向こうでも大丈夫。やれるはず」と、ジャカルタでもしぶとくしなやかに、そして次こそリーダーボードの一番上を狙っていくつもりだ。