記事

松山の先輩! K・T・ゴンは「僕も“賞金王”です」

2013年は松山英樹が史上初の“ルーキーキング”に輝き、最終戦では宮里優作がプロ11年目にして悲願のツアー初優勝を成就させるなど、今年は東北福祉大に始まり、東北福祉大に終わった1年だったといってもいいが、そういうくくりで言うならば、この“卒業生”のことも忘れてはならない。

K・T・ゴン。韓国出身の31歳にとっても今年は、忘れられない1年となった。レギュラーツアーへの登竜門「チャレンジトーナメント」は、いわば“二部ツアー”であってもシーズン序盤はそこでもなかなか出番にさえ恵まれない中で、「少ないチャンスを生かせたと思います」と、胸を張る。

ようやく今季“2戦目”となった7月の「LANDIC VanaH杯 KBCオーガスタ・チャレンジ」で“初優勝”を飾ると、その3戦後はさらに翌月の「ロイズコーポレーションカップ in 福岡雷山」で、早速2勝目。

宮里や松山のほかにも星野英正や谷原秀人に、池田勇太や藤本佳則など、そうそうたる母校の先輩・後輩の活躍も、ゴンは冷静に受け止めている。「もともと素晴らしい選手が集まっている学校なので。ツアーでもその選手たちが結果を出して当然なのです」と、かく言うゴンも、権奇澤(ゴンキテク)の名前で活躍したアマチュア時代から、一目置かれた選手であった。

4年生時には、阿部靖彦ゴルフ部監督からキャプテンの電撃指名を受けたほど。入学当初は言葉の壁に苦しみ、母国語の韓国語と日本語の辞書を必ず持ち歩いて分からない言葉があると、すぐにページをめくり、勉強に勉強を重ねた努力家は2004年に日本学生を制するなど、学生生活に馴染むのと比例してめきめきと頭角を現した。

卒業と同時に2005年にプロ転向。しかし、ツアーの出場権にはなかなか恵まれなかった。それと、韓国男子には避けて通れない兵役だ。06年12月に配属されたのは、38度線の近くの陸軍基地。極寒の地で、冬は寒さにも耐えながらの2年間は「ゴルフだけでは得られなかった友達も出来た」と貴重な経験も、その間に日本ツアーはすっかり様変わりしていた。

大学チームメイトはおろか、かつては韓国のナショナルチームで共に戦った母国の仲間たちも次々とスター選手の仲間入りをしており、「その点は、やっぱり気になりましたけど」と出遅れた感も、「仲間の活躍は嬉しいし、僕は僕で頑張ればいいんだ」と、腐ることもなくそれらをむしろ大いに励みにして我慢強く重ねた努力を、ようやくひとつ開花させた今季だった。

来季の“シーズンチケット”を手に入れて、またひとり“チャレンジの星”が誕生した。12月9日月曜日に行われた「ジャパンゴルフツアー表彰式」では、“9冠”を達成した後輩の松山英樹の隣で共にスポットライトを浴びて、「僕も“賞金王”になれました!」と胸を張った。「・・・チャレンジですけど」と照れたように笑った。

昨季はやはり、同ランク1位の資格で出場権を得た河野祐輝がツアー初優勝にも迫る大活躍で、初シード入りを果たしており、ゴンもようやくスター街道への入り口に立った。
「もちろん、僕もみなさんの後を追いかけていきたい思いはありますけど、誰かのマネをするとかいうのではなくて、自分は自分らしく頑張れば結果はあとからついてくるのかな」。

流ちょうな日本語も、すっかり板についたとはいえ、さすがに“あの瞬間”は緊張した?!
やはり「ジャパンゴルフツアー表彰式」で特別賞を受けたジャンボ尾崎の代理で、ゴンらとともにステージに立った長男の尾崎智春さんが先んじてスピーチをした。

「実は、事前に何も聞いていなかったので。あれを見ていてまさか僕も?! そう思った途端にもの凄く緊張しましたけれど、まあ・・・なんとかこなせたと思います」と、謙遜もどうして。
800人余のゲストの前でスーツ姿もビシっと決まった堂々のスピーチは、来季への良いリハーサルとなった。来る2014年に目指すのはもちろんツアー初優勝だ。その実力も実績も申し分ないゴンが、次はレギュラーツアーの舞台で、優勝スピーチを披露する日もそう遠くない。

※チャレンジ賞金ランキング賞に輝いたゴンには、9日月曜日に東京パレスホテルで開催した「ジャパンゴルフツアー表彰式」で、プレゼンターの青木功から記念のトロフィと、ノヴィルフロンティア株式会社の取締役ディレクター、久岡広季さまより賞金50万円と、株式会社パレスホテルの代表取締役社長、小林節さまより副賞として「パレスホテル東京 スイートルームご宿泊券」が贈られました。

関連記事