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ダイヤモンドカップゴルフ 2013

最終日は、年の差37歳の激突【インタビュー動画】

最終日は58歳と、21歳の直接対決となった。中嶋常幸が、3日目に66のベストスコアをマークして、松山英樹と首位に並んだ。最終18番は、右のラフからグリーン右下のラフに落として「そんなに難しいライじゃなかった」と本人はこともなげに言ったが、それでもピンまであまり距離のない打ち上げのアプローチは易しくは、なかったはずだが・・・。

「俺を誰だと思ってる!?」と、吠えた。「これが言いたかったのよ」と、たちまち笑み崩れた。確かに。ツアー通算48勝の永久シード選手は、今大会も最多の4勝を誇り、ここ大洗は86年大会を制した。また4年前は54歳の大洗。優勝争いの末に9位タイにつけるなど、このダイヤモンドカップゴルフの代名詞のような選手が、中嶋である。

得意の庭には違いない。それを差し引いても恐れ入る。その年齢で、しかもこのタフなコースで誰よりも少ないスコアで上がってきた。2番では、同組の宮本と甲斐に先にやられてムキになる。「2人がチップインをしたから。俺もヘンなアプローチは出来ない、と。最高のアプローチが出来た」と、自らもチップインイーグルで盛り上がると、そのまま一気にスコアボードを駆け上がった。

7番では左手前の8メートルを契機に、3連続バーディを奪った。9番では左から7メートルをねじ込み、「日本一好きなコースでこういうスコアは嬉しいよ」と、目尻も下がる。
勝負師の魂が、揺さぶられる。それが中嶋にとっての、大洗ゴルフ倶楽部だ。「挑戦意欲をかき立てられる」。たとえるなら、全米屈指の「オリンピッククラブのような」。技術に裏打ちされたショットにはちゃんとご褒美がもらえるが、偽物はあっけなくはねつけられる。「そんなところが似てるよね」。

そして、それほどの難コースでは、技術はもちろんそれに耐えうる体の充実があってこそ。「事の始まりは2年前のことでした」。ある日、ふと体重計に乗ったら95キロ。「間違いじゃないのか?」。目を疑ったが思い当たるふしも。スキー合宿中の青森で、車と車の間に右足を挟まれる交通事故に遭ったのは、2010年の1月だ。全治2ヶ月の重傷だった。「怪我のせいで動けない」。そのくせ孫の愛ちゃんと食す、お風呂上がりのアイスクリームに無上の喜びを感じていた“おじいちゃん”。
案の定、みるみると太っていった。「そのせいで、今度は膝が痛くなる悪循環」。事故の古傷にも悪影響が出始めて、踏み切ったのは昨年。「ダイエットのきっかけは、メタボでした」と1年間で10キロ減。「痩せたことが、大きなキーポイントになった」とショットのキレも戻ってきた。

いまは患部の右膝に、月2回のヒアルロン酸注射を打てばなおさら、身体に支障はどこにもない。今年はジャンボ尾崎がツアー史上初のエージシュートを達成し、先週は井戸木鴻樹が全米プロシニアで優勝を飾った。そして今週は、中嶋の最年長ツアー優勝の更新(※)がかかるが「オジサンは、くじけやすいからだめよ」と百戦錬磨の58歳も、そこはさすがにちょっぴり弱気だ。

身体はまだまだ若々しくても、心まではなりきれない。何せ最終日最終組で当たることになった松山は、長男のマサオよりもまだ全然若い。「なんで俺があんな若いのと回らなきゃいけないの?!」と、声を上げずにいられない。ただでさえ、厳しい戦いを承知の上で、「人になんか、かまってられない!」。松山に対抗していく気持ちには、とてもなれない。「自分と、コースと。その戦いに集中するしかない」と、悲壮な覚悟の中にもせめて、ひとつ策があるとすれば「明日の朝、スタートで松山にはこう言おうかな」と、ニヤリ。
「・・・俺を誰だと思ってる!!」。はてさて、21歳の怪物にはそんな牽制も、効き目がありますかどうか。

※現在の最年長ツアー優勝記録は2002年に、55歳と7ヶ月29日でANAオープンを制したジャンボ尾崎。

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