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中日クラウンズ 2013
今年もツアーメンバーが、たんぽぽの花を見に・・・【インタビュー動画】
開催コースの「名古屋ゴルフ倶楽部和合コース」の地元、愛知県の東郷町にある小規模授産施設「たんぽぽ作業所」に来るのも今年で早15年目を迎える。
1番ホールのパー4で、ティショットを直接入れてアルバトロスを達成したのは1998年の38回大会。そのとき受け取った賞金の一部を、同施設に寄贈したのがきっかけだった。
回を重ねるごとに、絆は深まっていく。今では、声を聞いただけで、それが誰だか分かる。待合所で施設のみなさんへプレゼントにと、サイン色紙にペンを走らせながら、DVDを見ていた。
施設のみなさんの普段の生活ぶりを、おさめたものだ。知的障害を持つみなさんが、雑誌の付録の袋詰めや自動車部品の組み立て作業をしながら、生き生きと就労訓練をされている姿。
「頑張って、働いています!」と、ふいにスピーカーから聞こえてきた元気な声に、中嶋の手が止まった。「ケンちゃんだ!」と、馴染みの方の名前を叫んで顔をあげた。いったんペンを休めて画面に目をやるなり、「ほーら、やっぱり!」と、58歳の笑顔が輝いた。まじまじと、ビデオに目をやり「凄いよね! 俺にはあんな細やかな作業はとても出来ない」。
施設の人々の、ひたむきな生き様にはいつも胸を打たれる。「僕らがいつも力をもらうんだ」との中嶋の言葉に、他のプロも真摯に頷く。
中嶋が、誘い合わせて毎年、一緒にここを訪れる常連メンバーたち。今年も5人が勢揃いをした。
弟子の鈴木亨は今年は特に、もはやこの作業所に来ることが、自分の中で当たり前の行事になっていることに気づかされた。
昨年は、無念のシード落ちを喫して本来ならば、この「中日クラウンズ」にも出場権がなかった。「この大会に出られないということは、みなさんにも会えないということ。そんな寂しいことは、ないと思った」。
一期一会の尊さを、改めて思い知らされた瞬間だ。
だから主催者推薦をうけて出場させていただけることになって、本当に嬉しかった。「またみなさんと会える」と、喜び勇んで駆けつけた。
質問コーナーや、みんなで一緒に合唱するつかの間のひとときに、今年も心から癒やされた。
毎年、中嶋の大親友の寿司職人の山内和義さんが用意してくださった新鮮なネタを、プロがみんなで握って、施設のみなさんにふるまうのが恒例だ。
寿司は、地元名古屋出身の桑原克典の大好物でもある。「いろんなお店でお寿司を食べますが、ここでみなさんと一緒に食べるお寿司が一番好きです!」。
兼本貴司は、季節の変わり目にはいつも思う。「みなさんお元気かなあ、病気などされていないかなあ・・・」。そんな懸念も、ここに来ると晴れる。屈託なく笑い転げて、はしゃぎ回る施設のみなさんの元気な姿を見るにつけても、星野英正も改めて思う。「パワーをもらっているのは、僕らのほうです」。帰り際にはみなさんが、端正こめて作ってくれた手縫いのぞうきんをお土産にいただいて、ジン・・・と来た。
施設のみなさんが、遠慮なくぶつけてくる「頑張って!!」のエール。「あれを聞くと、本当に頑張らなくちゃと思ってしまう」という中嶋は、ツアー通算48勝と輝かしい実績の中でも実は、この歴史と伝統を誇る「中日クラウンズ」のタイトルがない。しかも、AONの中では中嶋だけ勝ち星がなくて、「それが一番悔しい部分」と毎年、並々ならぬ闘志で和合に来る。
まして今年は、先週の「つるやオープン」ではジャンボ尾崎が、66歳にして62のエージシュートを記録した。また最終日には、21歳の松山英樹がデビュー2戦目して、JGTO史上最速のプロ初優勝を飾ったとあらば、なおさら気合いが入らないわけがない。
「66歳に62なんてやられたら、僕らも頑張るしかない。僕もジャンボや松山くんに、ついて行きたい」。
そして、15年来の“大親友たち”のためにも頑張る。「優勝争いして、テレビに映って、出来れば優勝トロフィーを、たんぽぽのみなさんに見せてあげたい」と、58歳の夢が膨らむ。
「今日はまた、このたんぽぽ作業所に帰ってこられて、みなさんの顔を見られて嬉しかったから。もしも、僕らが優勝したら手紙を下さい。それを励みに本戦から頑張ります!」と、約束した。
中嶋常幸インタビュー
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