記事

キヤノンオープン 2012

石川遼は「明日は黒が入っているような赤色で」

まさに早業だった。アテスト記載エリアに入るなり、石川はまっすぐに集計のボランティアさんの元へ。誰よりも先にスコアカードを差し出した。

会見場でさっそくそれを指摘された石川は照れ笑いでほんのりと頬を染めて「そこまでして最終組、というのは恥ずかしいのですが」。
決勝ラウンドの組み合わせは、スコアの良い選手ほど、後ろに組まれる。ただしタイスコアの場合は、スコアカードを先に出した選手が、後ろになる。

すでに通算12アンダーで、手嶋多一がプレーを終えていた。
さらに、この日同組で回った黄重坤(ハンジュンゴン)が、最終18番でチップインバーディを奪って並んだ。
「僕も、最後バーディでスコアを1個伸ばして最終組、というのがベストだったのですが」。

石川は手前カラーからのアプローチが入らなかった時点で、「明日はひとつ前の組でもしょうがない」。そう言い聞かせてみたものの、やっぱり「最終組でプレーしたい」。
幸い、マーカーの黄(ハン)がホールアウトするなり、サインをしてスコアカードを渡してくれた。石川は、歩きながら、素早くスコアを見直すことも出来た。石川に、好条件が揃った。
「ラッキーでしたね。どんな形であれ、楽しみ」。

今大会では3年連続3度目に実現した最終日最終組は願ってもない、池田勇太との直接対決。
ツアーでは、2度目となる。前回は2009年のコカ・コーラ東海クラシックでは、石川が勝った。
ツアー外競技では、2008年の関西オープンでもやはり、大接戦の末に土壇場で池田を倒した。

曜日を問わない同組対決は過去17回も、最終日最終組に限っては“二度”ともすべて石川に軍配が上がっているが、「勇太さんは、ミスをしないし、アイアンはピンを刺すし、どきっとするパットを打ってくる。ボールには、魂がこもっている。非常にやりにくい相手ではある」。

敵が手強いほど燃える石川だ。
4打差の6位タイから出たこの日も、「勇太さんの視界に入る」と、執念の66。特にバックナインは圧巻だった。
13番パー5は、スプーンで打った225ヤードの2打目がグリーンをとらえた。
10メートルものイーグルトライは「1メートルくらい右に曲がって上って下る」。大歓声とともに、カップに消えた。

16番は、「ラフからのほうが、適度に転がってくれる。3打目でもアドバンテージを獲って行こう」と2日連続で“直ドラ”のセカンドショット。右手前のラフから50ヤードのサンドウェッジを奥2メートルにつけて、バーディを奪った。

一時は池田に6打差をつけられながら、2打差まで詰め寄った。
今週は、気持ちの有り様を、色で表現している石川。
「明日はきれいで爽やかな赤というよりは、黒が入っているような赤。そういう感じで気持ちを落ち着かせながら、燃えるものを出して行きたい」。
がむしゃらに燃えた10代を卒業したいま、20代最初の優勝では大人っぽさを全面に出して戦う。

関連記事