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メンバーたちが感じた代表としての誇りと喜び
かの対抗戦の歴史と伝統にはまだまだとてもかなわないがメンバーたちには、大会を通じて確かに感じるものがあった。
代表の誇り、そして重圧。
ただ一人の士気が鈍っても、戦いには勝てない。
それぞれがチームのために全力を尽くすこと。
その先にだけ、栄光はある。
もっとも、誰もあえて口に出しては言わない。
この3日間は「メンバーの中に、常にアイコンタクトのようなものがあった」と、谷原秀人は振り返る。
初の“ロイヤルトロフィ”をキャプテンに献上することは、全員の「暗黙の約束」だった。
そしてその誓いは日を重ねるごとに、静かに、かつ確実に、選手たちの心に深く刻まれていった。
毎日揃いのユニフォームに身を包み、次第に一体感を強めていった選手たちは、一丸となって栄冠をつかみに行くことに、すっかり味をしめた。
「このメンバーで戦えたことを誇りに思う。みんなには、心から感謝したい。来年もまたここに立ちたい」と、谷原はしみじみと言った。
中国のWリャンと韓国のチャーリー・ウィも「この3日間は、特別な思いでいっぱいだった。みんなのために勝ちたいと、普段の試合以上にすごく燃えた。来年もまたメンバーに選ばれるよう頑張りたい」。
そして、若き代表の石川遼は「この大会の“常連”になりたい」。
ジュニア時代に“日本代表”に選ばれたことはあるが、それよりさらに広いアジア規模の大会はこれが初。
責任の大きさを感じ、今までにない緊張とプレシャーで自分を見失いかけたこともあったが、それを踏みとどまらせたのは「チームのために貢献したい」という本人のひたむきな思いと、何よりチームメイトたちのサポートだった。
2日目のフォアサムで、谷口徹から愛の鞭。
「毎ホールでカツを入れられ目が覚めた」と、ベテランの助言で普段の持ち味を取り戻し、迎えた最終日のシングルス戦は、デンマークのハンセンと互角以上の大接戦。
イーブンで迎えた16番でティショット、第2打とも深いブッシュに打ち込みギブアップしながら、続く17番パー3は3番アイアンでピン奥1メートル。
再びドローに持ち込むと、最終18番はグリーン奥のラフとカラーの境目からスプーンを握る策であわやチップイン。
ボールはわずかにカップをそれて、思わずその場に倒れ込んで悔しがる様子にはもはや、初舞台に戸惑う17歳の面影は消えていた。
谷原は、「もともと僕らは17歳と思っていないから」と、言った。
「若いとか、ベテランとか関係ない。初めから、遼も僕らと同じ仲間と思って戦ってきた。他の選手に対してもそうであるように、彼にも同じように期待し、責任を全うすることを求めてきたんです」。
またアジアの闘将・尾崎直道も「遼には若さでチームを引っ張って行ってもらいたい」と、3マッチとも第1組に石川を据えるなど、絶大な信頼を寄せたチームメイトやキャプテンの思いに応え、またひとつ成長した姿がそこにあった。
表彰式ではチームメイトのサインで揃いの赤いキャップを一杯にして、「この舞台にいられることがもの凄く嬉しい。アジアチームにいられることを、誇りに思います」。
みんなと一緒にロイヤルトロフィを高々と掲げたその手には、他の選手たちと同様に十分にやりきったという確かな手応えがあった。