重たい球が、三好の風を切り裂いた。強風が吹いた2日目に、ただ一人ボギーなしで回ってきたのは、今季日本ツアー1年目のＳ・Ｈ・ペク。
「今日は確かに風が強かったけど、プレーには何の影響もなかった。ピンチもまったくなかった。むしろ、惜しいチャンスをたくさん外した」。

後半は特に4番、5番、6番で3メートルを逃して、最後の9番は「1.5メートルを外した！」。上がるなり、仲間の選手に「嗚呼悔しい！」と、訴えかけた。
「今日は、もっと伸ばせたのに」。通算6アンダーは、2位タイにつけても欲張りだ。

身長181センチに、体重は「？（クエスチョン）」。ＨＰのプロフィールの項目も白紙にしたのは、「プライバシーは内緒」とは半分本気で半分冗談。「計るたびに変わるので、正確なところは本当に分からないんだ。でも、100キロは超えてるよ」と、ニヤリと、どっしりとした下半身は、三好の風にもびくともしない。

韓国出身だが、お父さんの仕事の都合で13歳でタイへ。ゴルフを始めたのはその2年後。国民的ヒロインの朴セリさんが、98年に全米女子オープンを制して「僕にもゴルフをさせてください」。お父さんに頼み込み、練習に励むようになった。

今はご両親とも、韓国に帰国されたが、ペクは今でもタイを拠点にプロ活動を続けているのは「練習環境が最高だから」。タイで最大のシェアを誇る飲料メーカー「シンハコーポレーション」に手厚いサポートを受けながらも、寂しくなったり、精神的に落ち込んだ時には韓国に里帰りする。
充電して、また戻ってくる。行ったり来たりの生活を続けている。

5度目の挑戦で、やっと出場権を獲得した昨年のファイナルＱＴでは、ランク15位に。初の本格参戦を果たした今シーズンも、韓国語にタイ語、英語を操り、どの国の選手たちからも可愛がられて、「何不自由ない」と闊達に笑う反面、繊細な一面も。
2012年にはドライバーのイップスにかかった。その影響で、今もティショットには自信がなく「得意技はアプローチ」と言って譲らないが、恵まれた体格を生かして今週のドライビングディスタンスでは目下9位につけるなど、攻守揃えたプレーが持ち味だ。

ここ最近は、次週に控えたフォールシャッフル（出場優先順位の入れ替え）のことが気になり、思うようなプレーが出来ないことが多かった。「今週から気持ちを入れ替えた」と、その途端に伸び伸びとＶ争い。「週末も楽しく過ごしたい」。大きな体を揺すって、堂々と三好を行く。

• Ｓ・Ｈ・ペク