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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2003
何度も跳ね返されてきた初優勝の壁、悔しさをこらえ平塚哲二は練習を重ねた
もっとも悔しかったのが、今年8月のアイフルカップだ。一時は、2打差の首位にたちながら、最終ホー ルでボギーを打って、プレーオフにさえ残れなかった。
「なんで勝たれへんのやろう・・・」。いくら考えても、答えなど出るはずもない。内藤雄士コーチの力も借りながら、ひたすら練習を積むしかなかった。
この1年、欠かさず続けてきたハーフスウィングを繰り返す練習法。バランス、リズム、スウィンプレ ーン。感覚がずれたとき、元に戻す基本となる。状態の良し悪しが把握できる。敗れた翌日にも悔しさ はぐっとこらえて、黙々とクラブを振った。「あんまりゴルフゴルフで、嫌いになってしまいそうなと きもありました」。
今季ツアー最終戦、3打差首位でスタートした最終日。そんな努力の日々が最後の最後に、報われた。
5番パー4。ティショットを左の崖下に落とした。フェアウェーに戻すには、丈高い木の上を越えていく か、幹と幹の狭い隙間をぬって出すしかない。難しい顔で腕組する平塚の肩を、今週のキャディ、サイモン・コリンズさんがトントンと、叩いた。
「あっちに出すのは、どう?」指し示したのは隣の4番ホールだった。「そうか、そっちの手もある」。下見にいくと、4番フェアウェーからなら、かろうじて5番グリーンのピンフラッグが確認できることがわかった。
5番ホールに背をむけて第2打を打ち、隣ホールからピッチングウェッジで打った残り 109ヤードの第3打 は、ピンそばにピタリ。冷静な判断力が、絶体絶命の大ピンチを救ってくれた。
朝から、「手がブルブル震える」ほどのプレッシャー。それほどの緊張感の中でも、同じ組の伊沢、手嶋を観察するなど、心の余裕は失わなかった。「2人がどういう心境でプレーしているのか、見てやろうと」。注意深く様子を伺いながらホールを進むうちに、「あれほどすごい選手でも緊張するんだな」ということがわかってきて、ほんの少し、気が楽になった。
7番で、3メートルのパーパットを拾った。8番では、バンカーから打ったアプローチが8メートルもオー バー。しかしこれをど真ん中から決めてパーセーブした。9番でも、打った瞬間に「外した!」と思っ た5メートルのパーパットが、最後のひと転がりでコロンとカップに沈んだ。
この3ホールが今週の、そして今年の平塚を象徴していた。プレッシャーがかかるほどにコントロールが効きにくくなるスウィング。ショットの乱れをカバーしてくれたのは、もともと得意だったパッティングだった。今週は、「ほとんどミスがなかった」というほど、それが際立っていた。
「これまでは、ショットのミスをパットでカバーしきれずに負けていた。過去、これほどパットが入ってくれたことはなかった」。
13番で、6メートルのバーディチャンスを沈めて、2位と4打差。初優勝を決定づけた1 打は、やはりグリーン上だった。