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最終日のスタート前に最大の試練が・・・!! アジアチームの命運は

キャプテン・ジョーこと尾崎直道が、欧州対アジアの対抗戦「ザ・ロイヤルトロフィ」のキャプテンに就任してから5回目の今年が、最大の試練だったといえるかもしれない。

大会は、伝統の対抗戦「ライダーカップ」にならって、もしも相手チームに棄権者が出た場合に、どの選手を外すか。同点にもつれこんだ場合に、プレーオフに挑む選手名と合わせて「同意書」に書き込み前日のうちに、あらかじめ提出しておく決まりだ。

「毎年、この作業が一番つらいんだ」と、直道は打ち明ける。自筆のサインをして封筒にのり付けする際に、いつも思う。「ここに書いた名前が、最後まで誰にも知られなければいい」と。誰の出場の機会も奪うことにならなければいいのに、と。

しかし、今年は封筒が開封されてしまった。

この日16日・日曜日はいよいよ最終日のシングルスマッチのスタート直前に、棄権を申し出たのはなんと、戦う闘将、オラサバル。「短いクラブならどうにか打てるんだが・・・」。長いクラブになると、とても戦える状態ではなかったという。
「これが、ただのストローク戦なら俺は、這ってでも出た」。それが、ゴルフというスポーツの本質だと思うからだ。たとえ80を打とうが個人競技なら、「自分だけの責任」。しかし、大事なチーム戦では「自分のプライドなど、どうでも良いことだ」と、苦渋の決断をした。

「キラデクには本当にすまないことをした」と、オラサバルは詫びた。

直道が、バイスキャプテンの梁津萬(リャンウェンチョン)と熟考の末に、同意書に書いた選手が、23歳のキラデク・アフィバーンラトだった。タイの新鋭。今大会は初出場の彼は、初日と2日目のダブルス戦で「自分の思うようなプレーができなかった」と、本当ならニコラス・コルサールツと当たるはずだったこの最終マッチで、悔しさをすべてぶつける気でいた。

そんな彼に、今日は出場できないと告げるときといったら・・・。「キャプテンとして、最悪の仕事だった」とキャプテン・ジョー。落ち込む直道に、キラデクは言った。
「キャプテンが決めたことに、僕は従うだけです。それに、対戦表に僕の名前がなくてもきっと誰も驚かないですよ」。そんな自虐的なジョークも、直道にはつらかった。

ほかの仲間も、キラデクの心中を察してあまりある。
「僕が彼の立場なら、相当に気分が悪い。たとえ負けたとしても、ここで戦うこと、そのことが大事で、ブルネイまで来てどうしてプレーができないのか」とは金庚泰(キムキョンテ)。

わざわざ、タイから弟さんも応援にきていたという。母国のスポンサーも、ツアーを組んで大挙して駆けつけた。そんな中で、「出られないなんて絶対に悔しいと思う」と、藤本佳則も仲間を気遣った。

「しかも、実は出られないんだと言われたのはスタートの30分前ですよ! ありえない」と、当のオラサバルと対戦するはずだった裵相文(ベサンムン)も、キラデクの代わりに憤慨した。

しかし、本人は悔しさを押し隠して言った。
「出られなくなったのは残念だけど、アジアのために戦った昨日までの2日間も、今日のこともきっと、僕がこれからもっとすばらしい選手になるための貴重な経験。それに、ゴルフには試練がつきものだけど、そのときにどう対処するか。それが一番、大切なことなんだと思うんです」。

そう微笑んでキラデクは、「みんなの応援に行ってきます」と、手ぶらでコースに出て行った。「今日は少しでもたくさん、みんなの笑顔が見られればそれでいい」と、この日は誰よりも強く我らがアジアチームの勝利を願っていたのが、彼だった。

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