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勝負はプレーオフへ・・・! アジアは逆転の劇的V2
4対5。欧州とアジアの対抗戦「ザ・ロイヤルトロフィ」は、我らがアジアチームは依然として、欧州に1ポイント差をつけられたまま、16日・日曜日の最終日はシングルスマッチプレーが始まった。
アジアは一丸となって、キラデクの仇を取った。
本来なら、この日は第1組でオラサバルと回るはずだった裵相文(ベサンムン)は、やにわに世界随一の飛ばし屋、ニコラス・コルサールツと当たって1ダウンを食らい、スウェーデンの強豪ヘンリク・ステンソンは、「やっぱり彼が一番手強い」と石川遼も、最初から警戒をしていたとおりに勝ち点を持ち帰れなかったが、その分、最終マッチのY・E・ヤンは、世界ランク31位のフランチェスコ・モリナリを相手に、2&1と相変わらずの強さを見せた。
前日に41歳の誕生日を迎えたばかりのインドのジーブ・ミルカ・シンは、最年長メンバーは48歳のミゲル・エンジェル・ヒメネスに1ダウンをお見舞いして帰ってきた。
日本の若き精鋭は、23歳の藤本佳則。11番で、この日2度目の3パットのボギーを打った。身長165センチの小さなサムライは、189センチのドイツのマルチェル・シームに一時は、3ダウンを食らった。ここで「彼のスイッチが入った」とは、専属キャディの前村直昭さん。12番から怒濤の3連続バーディで、一気に盛り返した。
「終盤は、応援に来てくれてありがたかった」と、藤本は良き仲間にも感謝した。キラデク・アフィバーンラトは、自らプレーができない分、キャプテン・ジョーとともに精力的にコースを歩き、 選手たちの応援に回った。「サポートしてもらって嬉しかった」と藤本も言ったように、最終マッチに出られなかった悔しさを押し隠して、笑顔で声援を送ってくれた気の良い仲間の存在が、いっそうメンバーたちの心に火をつけた。
この日の7マッチを終えて、ゲームは8対8の同点に、直道の指名でY・E・ヤンとともに、フォアボールマッチプレーによるプレーオフに挑んだ金庚泰(キムキョンテ)。
「キラデクの分まで頑張ろうと思った」と金はいう。仲間のためにも、「負けるわけにはいかないと思った」と、エキストラホールの18番で、奥から6メートルのバーディトライは、コルサールツがそれより内側につけていたが、先にこのスライスラインをねじ込んだ。
敵に特大のプレッシャーをかけてみせた金をして、キャプテン・ジョーが思わず叫ぶ。「ヤツはまさに、マッチの鬼だ!」。それにしても今年アジアの8戦士は、特に「戦うスピリットが強かった」と直道は思う。「1ショットの気合いが、欧州チームよりもまさっていたと思う」。今年5度目の重責も、「絶対に諦めないというみんなの気持ちを、今年一番強く感じた」と思うにつけても、今年もまた懲りずにキャプテンを引き受けて、本当に良かったと思う。
「去年は、さすがにもうやめようか、と。1週間引きずった」。2日目の圧勝も、最終マッチで大逆転を食らった昨年大会は、それほどの心のダメージを受けたものだ。
「奴らは今年も最後に絶対来るぞ」と、メンバーたちにハッパをかけたのは前夜のチームディナーだ。
神妙にうなずいたメンバーたち。「彼らを信じていた」とはいえストレスのためか、直道の下唇にはついにヘルペスができていた。
でも最後は、2009年大会以来となる王冠の奪還に、再びみんなでこうして笑い合うことができた。その中にはちゃんとキラデクの姿もあって、仲間と屈託なく喜び合う様子も、キャプテン・ジョーの肩の荷が少し下りた。そして何より副キャプテンの存在だ。中国の梁津萬(リャンウェンチョン)は、常に手となり足となって支えてくれた。
アジアチームは最終日に戦ったのは7人でも、10人全員で力を合わせて勝ち取った勝利だ。直道は、9選手の顔を見渡して、心から言った。「みんなを誇りに思う」と。
欧州キャプテンのオラサバルは欠場しておきながら、「来年は取り返しに行くぜ」と捨て台詞を吐いたが、我らがアジアにはのぞむところだ。
<最終日・16日のシングルスマッチプレーの結果>
−ホセマリア・オラサバル A/S K・アフィバーンラト−
○ニコラス・コルサールツ 1UP 裵相文×
−ゴンサロ・フェルナンデス・カスタノ A/S 金庚泰−
×マルチェル・ジーム 1UP 藤本佳則○
−エドアルド・モリナリ A/S 呉阿順−
×ミゲル・エンジェル・ヒメネス 1UP ジーブ・ミルカ・シン○
○ヘンリク・ステンソン 1UP 石川遼×
×フランチェスコ・モリナリ 2&1 Y・E・ヤン○
※8対8の同点により、欧州はフランチェスコ・モリナリとニコラス・コルサールツに対して、アジアはY・E・ヤンと金庚泰(キムキョンテ)の最強コンビによるフォアボールのマッチプレーに突入。エキストラホールの18番で、金がバーディを奪い、アジアの勝利