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倉本昌弘、母校に帰る
偉大なる先輩は、在校生たちに畏敬の念を持って迎え入れられた。
スナッグゴルフの寄贈式では体育館に足を踏み入れるなり、拍手と歓声が鳴り止まない。
「あきらめない」をテーマにした講演会では冒頭に流したツアー通算29勝目(30勝目)のVTRに、あちこちから感嘆の声が上がった。
「倉本先輩って、ほんとうに凄い人なんだ・・・・・・!」。
その人となりについて、子供たちは事前に下調べを済ませていたが、実際に目の前にして改めて感激しきりだ。
レッスン会で、倉本との対戦のチャンスに恵まれた6年2組の安田勇暉くんは、1打ハンディをもらってタイに持ち込んだがそれを無邪気に喜ぶどころか、「いえいえいえ」と、謙遜して手を振った。
「倉本プロのほんとの凄さは知ってますから・・・!!」。
幼いころからゴルフを始め、3年生から本格的にスクールに通っているという安田くんは「ウッズ」や「遼くん」など“好きなプロリスト”にさっそくこの日、「ポパイ」の名を加え、「僕も倉本プロみたいな偉大な選手になりたいです」と、夢を語った。
寄贈式で6年2組の梶山宗嗣くんとともに、倉本の手からリボンのかかったランチャー(アイアン)とパターを受け取った同1組の寺門優吾くんは、偶然の再会を打ち明けた。
寺門くんは、2年生で広島に越してくるまでは、大阪の天王寺に住んでいたという。何の大会だったかは忘れてしまったそうだが幼稚園のとき、ゴルフ好きのお父さんに連れられて関西で開催されたトーナメントを観戦した。
パッティンググリーンで、練習を眺めていた寺門くんにサインボールをプレゼントしてくれたのが倉本だった。
「あの人が、まさかここの卒業生だったなんて・・・!!」。
寺門くんが、たまたま転校してきた先が倉本の母校だった。
その偶然に、しばらく遠ざかっていたゴルフ熱に、再び火がついた。
「また練習を始めてみようかなあと、思ってます」。
校内ではこれを機に、新たに“ゴルフ部”が誕生し、倉本が来校したこの日がその最初の練習日となったのだが部員12人の枠に、希望者が殺到した。
残念ながら、寺門くんは今回は入部のチャンスを逃したが次回の募集も必ず手をあげるつもりでいる。
今や、一番人気となったゴルフ部の顧問を務めるのは、歴20年の腕を買われた西田直樹先生だ。
講師には、PTA会長でハンディキャップ6の高田諭さんを迎え入れ、当面この2人で部を運営していく。
自身の勉強をかねて、実技レッスン会の輪に加わった西田さんは「子供たち以上に僕が一番喜んでいます」と興奮気味で倉本との対戦に臨み、みごとパーで分けて今後の部運営への意欲をますます高めた。
高田さんは、小・中ともに倉本の8年後輩でもあり、その責任の重さを噛みしめた。
「倉本先輩の意志を僕らがしっかりと受け継いで、子供たちに伝えていかなければ・・・!」と、さっそくその日の放課後の部活動で、先のレッスン会で得た知識を指導に当てていた。
偉大な卒業生が、母校に新たな波を起こした。
生徒ばかりか、先生たちまでもが目を輝かせ、倉本の話に聞き入った。
そんな様子に清見嘉文・校長先生も「倉本プロほどの“一流の大人”と触れあう機会はなかなかない。今日という日は我々にとっても一生の思い出になります」と、胸を押さえた。