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ブリヂストンオープン 2016
デシャンボーって何者だ?
テキサス州のサザンメソジスト大学では、ニクラウスやウッズほか5人しか達成していないWタイトルを獲得した。
14年には軽井沢で行われた世界アマで、61を出して優勝。
今年のマスターズでは、21位タイでローアマを獲得。
その後、プロ転向するなり今年は米二部のウェブドットコムツアーで早々と優勝を飾り、2016-17シーズンの出場権も獲得した。
その才能と実力はもちろんのこと、ブライソン・デシャンボーの見所はストイックというべきか、底抜けの探究心ともいうべきか。凄まじいまでのこだわりと、ゴルフへの取り組み方だ。
出場3度目のホストプロとして、共に会見場に座った先輩プロも、独特という表現すら超えたゴルフ理論を持つ若者に、一目置いている。
「周りにどう見られようとも、自分なりの理論を持って、自分なりのゴルフを貫く彼の姿勢は尊敬に値する」とのブラント・スネデカーの賞賛の言葉に、「褒めすぎですよ!」。一応は、照れてみせたが、我が道を行く意思の強さは否定しない。
主催者がギャラリー向けに、会場配布のため発行した「デシャンボーって何者だ?」の冊子の特集インタビューでも応えているが。「みんな僕のことを“イカレた科学者”と呼んでいる」と、揶揄の声も知っている。
「でも科学者というより徹底した実験主義者と思って欲しい」と、本人も願い出たとおりに、ブリヂストン社のボール「TOUR B330S」も、独自の実験結果で使用を決めた。
大量の塩を溶かした水槽に、ボールを浮かべてクルクルと回す。デシャンボー曰く、芯がきっちり真ん中に位置しているボールは、一定の回転を延々と続けるが、少しでもズレがあると不規則な動きをして最終的に水底に沈んでしまうのだとか。
メーカーのスタッフに、どんな説明を受けたとしても、実際に自分の信じる実験方法にかなったものしか信用しない。
大学でも物理学を専攻した新鋭のそんな頑固な姿勢こそ「ゴルフサイエンティスト」と異名を取るゆえんである。
ブリヂストン社のボールも、納得の実験結果が出たからこそ「僕のほうから使用をお願いした」と、納得ずくの使用契約に持ち込んだというわけだ。
ほかにも「全部、同じ姿勢で打てるのがいい」と、4番からサンドウェッジまですべてのアイアンに、37.5インチのシャフトを装着するなど、こだわり尽くしの23歳だ。
試合中に、池から打つショットで、ズボンもウェアも脱いでパンツ一丁でプレーして「服が汚れるのが嫌だった」と、平然とのたまったという逸話も。
この日は会見の前に、スネデカーと地元小学生の社会見学会にも参加。終始笑顔で一問一答に応じたり、子どもたちと気さくにハイタッチを交わしたり、「僕はプロになったばかりだが、プロになったからといって態度や生き方は変えたくない。先日、亡くなったばかりのパーマー氏のように、ファンには常に敬意を持って接したいんだ」。
この日の公開練習ラウンドでは、ホストプロの長谷川祥平と、本戦には出ないが埼玉栄高3年の坂本雄介さんと、名古屋市立西陵高2年の青山晃大さんを引き連れ、「若いながらも素晴らしいゴルフで、彼らの将来性を感じた。僕も彼らのお手本になるような選手でありたい」と、親切に指導する姿も。
「週末に、デシャンボーと一緒にプレーオフが出来たら最高」と、スネデカーにちらりと横目を向けられ「そうなれば、僕も嬉しい!」。
個性的なコスチュームも見所満載!
練習ラウンドでは、キャップにスラックスと“標準仕様”も、いざ開幕すればガラリと衣装替え。尊敬してやまないベン・ホーガン氏と、大学の先輩でもあるペイン・スチュワートを彷彿させるハンチング帽と、ニッカボッカ姿もまた本戦からのお楽しみだ。