記事
ABC チャンピオンシップゴルフトーナメント 2004
マンデートーナメントから勝ち上がった井上信が、ツアー初優勝!!
「入れ〜!!!」。
背後で、仲間たちの絶叫が聞こえた。その声に、押されるようにボールが沈んだ。
ガッツポーズは無意識に出た。ウィニングボールを拾い上げると、同じ組で戦った神山隆志が、笑顔で手を差し出してきた。
このオフには米国合宿に誘ってくれ、今週は、同じ宿に泊まって毎晩、一緒に食事を共にしてくれた兄貴分。その手を力強く握り返すと、涙があふれてきた。
グリーンサイドには、師匠と慕う平塚哲二や、小山内護、川原希、立山光広、増田伸洋・・・。初優勝を祝って駆けつけてくれた、たくさんの仲間たち。互いに真っ赤に目を腫らしたまま、無言で肩をたたきあった。
表彰式がすんだら、手荒い祝福。
彼らの手で宙を舞い、18番グリーン横の池にはめられた。
2打差の単独首位に立った昨晩は、興奮で、なかなか寝付けなかった。苦手ホールが何度も脳裏に浮かんできて、体が火照ってくる。「あのがけ下に打ち込んだらどうしよう?」。何度もシュミレーションを繰り返し、ピンチを迎えた自分を想像すると、ますます眠れなくなった。
耐えかねて、夜、平塚に電話してみた。
「緊張、してるんです」と告げると、
「勝とうと思わんでいい。お前は、まずはシード入りのことだけ考えたらいい」との答えが返ってきた。それで、少し吹っ切れた。
確かに優勝、なんて考えてもいなかった。川岸、神山、鈴木と並んで迎えた18番も、狙いは初シード入りの当確と、次週ツアーの出場権が確実に手に入る「5位入賞」だったのだ。