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関西オープンゴルフ選手権競技 2018

田中秀道が丸1年ぶりのツアーで思うこと。

通算10勝の雄が、昨年の今大会以来、丸1年ぶりのツアー出場を前に、3つの先輩の50歳に、心からの賛辞を送った。
「日曜日は、テレビの前で泣きました」。
練習日に田中が握手を求めたのは50歳にして、28歳の藤本をプレーオフ2ホールで破り、3度目のプロ日本一に輝いた谷口徹。
90年代は、共にバチバチと火花を散らしたライバルはいまだに第一線に立ち続けて、偉業を成し遂げた。

「谷口さんの優勝が、本当にどれほど凄いことか」。
自身は2001年のミズノオープンを最後に、勝ち星が止まったどころか、02年から5シーズン戦ったアメリカから腰、肩、首とありとあらゆる痛みを土産に持ち帰ってからは、出場資格にすら恵まれないまま、47歳を迎えた。

「進化形のクラブにも、いまだに慣れないまま。体が動いて来ないのに、頭はまだ若い頃のまま。まるで運動会で、久しぶりに走ったお父さんみたいな」と苦笑する。

身長166センチの小さな体で、切れ味鋭いショットを武器にしたが「今はあのときの感覚のまま振っても、クラブがついて来ずに振り遅れて右に飛ぶ、みたいな」とため息は途切れない。

80・・・時には90を打ってしまうような時もあるといい、今年は春に3試合の地区オープンにも挑戦したが、いずれも予選落ち。
屈辱の中でも、「やーめた、って言ってしまうとすべてのものが止まってしまう気がして。チャンスさえ頂けるなら、下手でも現場に立ち続けていたい」。
プライドもちぎれる思いで振り払い、懸命に気力を奮い立たせるここ数年を振り返ればこそ、「谷口さんの凄さは優勝以上のものがある」。

谷口とて、順風満帆ではなかった。
「谷口さんも、脳と体の感覚が離れていくような実感はあったと思う。その中で、シードは守り続けているといっても、良い悪いの浮き沈みを味わい、苦しみながら、気持ちをあそこまでまた、上げていった」と、畏怖の念しかない。

勝負を決したプレーオフホールも含めて、2度、3度とガッツポーズを繰り出す姿を田中も久しぶりに見て感動した。
「若い子にもあれをやれよと言っても、出来るもんじゃない。あれは意識してではなく腹から出ているもんだから。誰にもマネ出来ない」。
あの年齢で、あのパフォーマンスがまだ出来る。
「勝ち方も素晴らしかった」と、田中も1年ぶりの実戦を前に、先輩の勇姿を目に焼き付けた。
「僕もあそこまでは行けなくても、決勝ラウンドでまさかの60台を出せたり出来れば」。
長く低迷したままでも、「OBを連発しても、親身になってくれるメーカーの方や、遠くからわざわざ見に来たよ、と言ってくださるファンの方にもまだ何にも返せていない」。
先輩の勇姿を焼き付け、田中も恩返しの気持ちを背負って挑む。

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