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マンダムルシードよみうりオープンゴルフトーナメント 2003

『ただ普通に18ホール回ろうと思ってた』上がり3ホールで連続バーディ、ノンプレッシャーで初優勝を勝ち取った谷原秀人

この日最終日。谷原がもっとも緊張した場面は、勝負を決めた18番グリーンでの表彰式だった。「あんな大勢の人の前で話すなんて、ほんともう、初めてで・・・」優勝スピーチに、何度も口ごもり言葉を噛んだ。「間違いなく、こっちのほうが凄いプレッシャーだったよ!」
ラウンド中も、普段のプレーと同じように、キャディの扇(おうぎ)慶太朗さんと良く笑い、良くしゃべった。前半の5バーディで首位に踊り出ても、その姿勢は変らなかった。
「緊張? 特にしていませんでした。誰が一番恐かったかって? 特に誰も。ただ、普通に18ホール回ろうと、今日が最終日だと思わずにラウンドしようと決めていましたから」。
むしろスタートから、後ろの最終組の展開さえも予想する冷静さがあった。
「ジャンボさんも直道さんも、最近、勝ってないから多少のプレッシャーがある。砂入さんもあのメンバーに挟まれての最終組だと、相当のプレッシャーのはず・・・。だから優勝者が出るなら、きっと僕らの組からだと思ってた」
こんなことを、サラリと言ってのけられるほど、この日、谷原の度胸は座っていたのだ。

バック9は完全に、Vモードのゴルフだった。
13番パー3で右ラフに打ち込んで5メートルのパーパットを残したシーンも、ど真ん中から決めて冷静に切り抜けた。
佐藤信人に並ばれた16番では、5メートルのバーディを決めた。
17番パー3は、7アイアンであわやホールインワンのスーパーショット。
「球が落ちたときは一瞬、“入った”と思った。その瞬間、『あれ、(ホールインワン賞の)300万?』と思ったけど(笑)」ピンそば50センチにつけてバーディ。
18番パー5は、ティショットで今週、初めてアイアンを握った。「僕はいつでもドライバー。できれば“アイアンは持ちたくない派”なんですが」それでも、あえて安全に刻むルートを選んだのは、もちろん「絶対に勝ちたかったから」に、ほかならない。6アイアンの第2打を残り133ヤード地点に運び、9アイアンで軽めに打ってつけた5メートルのバーディパットは、またもやど真ん中からカップに沈んだ。
まだ、最終組のプレーが残っていたが、18番をグルリと埋め尽くしたギャラリーのどよめきと大歓声が、ゲームオーバーを告げていた。「自分でも、ここまで良いゴルフができるとは・・・!」本人も絶句する、上がり3連続バーディ。とても、デビュー2年目とは思えない。貫禄たっぷりの初優勝。
「こんなの、早すぎですね」と谷原は謙遜したが、ツアー初Vは、年頭に掲げた目標のひとつだった。開幕から、「今年は絶対に勝つつもりです」と、宣言していた。
前日2日目は、1番でOBを打つなど、ティショットの安定性を欠いて伸び悩み、通算8アンダー5位タイで迎えた最終日は、「とにかく攻めて、攻めまくるだけ」と心に誓った。そのとおりに、最後までアグレッシブなゴルフを展開した。
どことなく、飄々とした風情とは対照的に、キリリとつりあがった太い眉には谷原の、「思ったことは必ずやり遂げる」という意志の強さが、にじみ出ている。

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