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石川遼 everyone PROJECT Challenge Golf Tournament 2020
竹内廉が逆転で、プロ6年目の初優勝
仲間が浴びせた水シャワーは、なぜかほんのり甘かった。
「…誰かスポーツドリンクかけたやろ!」。
初めて味わう勝者の儀式は「美味しかった」と、大笑いした。
8位タイから出た最終日は、1番で7メートルのバーディ。勢いづいた。
7番から4連続バーディを奪ってあっという間にV争いに加わった。
「もしかしたら、とそこから必死でバーディを狙っていった」。
16番のボギーで、3人タイの首位に並んだ。
直後の17番ホールで、スコアボードを初めて確認して「緊張してきたかもしれん…」。
思わず漏らした声を、インターネット生中継の音声マイクが拾った。
「プレーオフか。もしくはチャンスの17、18番でどうか。考えたらティショットで足が震えた」。
初優勝の重圧に襲われたが共にしっかりとフェアウェイを捕らえ、ピンそばのチャンス。あがりの連続バーディは、完璧だった。
通算16アンダーで上がると4つ後ろの最終組を待たずに、勝負は決まった。
幼少期から習ってきた極真空手の効果もあり、17年のデビュー時から良く飛ばすと評判だった。
だが「今週、遼さんのピンポジは、初日からいやらしいところに切ってあった」と、2013年から本大会を手掛ける石川の罠には、頭脳で対抗。
1打目からグリーンの落としどころを計算してスプーンなどで丁寧に刻み、雨が降り始めた2日目以降はドライバーを短く握って振り切るなど「より遠く正確に」。頭を使ってプレー。
10番の計測ホールも「左のラフに入れると厄介になる」と攻略に徹し、そのためドラコンも下位に甘んじたが気にしなかった。
8位タイにつけた前夜は、7歳と5歳になる息子たちに「早く優勝して」と、せっつかれたが、「明日は、確実に3位狙い」と、がっつかなかった。
「まさか、勝とうと思っていなかったので、本当に嬉しい。妻と子どももそうですが、まずは、父と母に」と18番で、2メートルを沈めたウィニングボールを大事にしまった。
ツアー3勝で、選手会長の時松隆光や、欧州ツアーで孤軍奮闘する川村昌弘らとは同学年。
「みんなに追いつくには、もう一歩」と、自身初のレギュラー昇格をにらむにも大きな1勝だ。
「これで、少し気持ちの余裕も出てくる。Abemaで賞金王、とか。今まで考えたこともなかったような形での初シードも目指せるようになる」。
19歳で結婚した元カラテカのヤンパパが、大手柄のイッポンを取った。
そのほか、2打差の2位タイにはこの日、11番でホールインワンを達成した上井邦裕と、高柳直人の2人。
女子プロの河本結さんの弟で、日体大の河本力さんが通算10アンダーの8位タイでベストアマを獲得した。
また、日大の桂川有人さんが、3日間平均302.33ヤードを記録してドラコン1位を獲った。