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トップ杯東海クラシック 2018
キュー太郎が初V!
1打差から出た最終日に、最終組のひとつ前で回ったのはかたや5度の賞金王と、09年の全米プロ覇者。
終盤は、ついに韓国のY・E・ヤンと一騎打ちになった。
並んで迎えた16番は、屈指のパー3で共にチャンスを迎えた。
「ヤンさんが、僕よりわずかに近かった」と、キューが先に6メートルのバーディトライを打った。「僕が遠いパットを決めればプレッシャーをかけられる」と、言った通りにねじ込んだ。
「ヤンさんのプレッシャーになった」と、1打差の首位獲りを成功させると17番ではピンそばのバーディで2打差に。
迎えた最終ホールは、危なげないパーセーブで締めくくって「片山さんとヤン選手。2人のレジェンドと回って2人よりも良いゴルフが出来た」と、喜びも倍に。
3勝の経験があるアジアンツアーは「雨が降ると、雷が鳴る。すぐに中断するけど、日本ではそうはいかない」。雨中のプレーは苦手だった。
でも最終日は、嵐の前の静けさが幸いして坊主頭に雨粒も、ほとんど受けずに済んだ。
「僕にとっては8年ぶりの優勝も、日本では初。これからはオールドルーキーとして、毎年1勝することを目標に頑張っていきたい」と、三十キュー歳が初々しく言った。
いつも明るく前向きなゴルフはコーチのボン・ロペスさんに教え込まれた。
「家族となかなか会えない」と、その点では日本で寂しい単身赴任も、頭がおソロの専属キャディに癒やされる。
その道18年のマルベリーさんは、御年55歳の大ベテラン。
「腰が痛い」と言えば揉んでやり、「足が痛い」と聞けば代わりにカートを引いてあげる。
4年目の日本で、何がお気に入りって「宅急便は最高ですよ!!」。
14年まで主戦場のアジアンツアーは国境を越える旅の連続だった。
「重い荷物を持って歩くのは、それだけでもストレス。でも、優しく親切な日本の人たち。毎週、美しく整備されたコース。日本ツアーは本当に恵まれている」と、しみじみと感謝を述べた。
名字の「QUE」は母国では「ケ」と発音するそうだ。
でも10年前にアゴまで伸びたロン毛を切って、坊主頭にした途端にアジアンツアーでついたあだ名が「キューボール」。
日本の登録名も、それにならうと「今度はキュー太郎と呼ばれるように」。
日本のアニメが大好きで、いまお気に入りのヘッドカバーは、目玉のおやじ。
「ゲゲゲの鬼太郎は、フィリピンでも放映してる」。
「オバケのQ太郎」はやっていないがキャラはもちろんネットでチェック。
「“頭に毛が3本”が似てるから、みんな僕をQ太郎と呼ぶんでしょう?」。とぼけて笑った。
「日本のファンに、もっと親しみを持ってもらう」と昨年から、オリジナルのパロディ帽子をかぶり始めた。
この日選んだ白地に緑の3本線も「毛が3本」を表現すると同時に、地元名古屋の東海漬物「きゅうりのキューちゃん」を意識しており、おまけにこの日は上下きゅうり色のウェアでまとめて「帽子が欲しい人は、僕のウェブサイト“angeloque.com"で販売してる。チェックしてみて!!」。
優勝会見で、ちゃっかり宣伝も済ませておいた。
目玉のおやじに加えて、オリジナルのヘッドカバーに刺繍してあるのは、愛する我が子2人の似顔絵。6歳の長女チャンドラちゃんと4歳の長男カミロ君。
元プロゴルファーのトレーシー夫人はヨガインストラクターをしながら、故郷マニラで夫の帰りを待ちわびる。
来週の空き週に、いったん帰れる。久しぶりに家族に会える。
「絵を描くのが好きな娘には塗り絵と、車が好きな息子にはおもちゃと。いつものお土産に加えて明日は賞金も持って帰れる!!」。
喜ぶ家族の顔を想像して胸がキュッ、となる。