記事
賞金2位を支えた、ノリノリノリスの魔法の杖
賞金2位のノリスが、1ホール当たりの平均パット数で1.7324を記録して1位に。
「パットは一番好きだし、得意な分野。一番練習するのもパターだし、目標にしていた部分。結果が出たのは嬉しいね」。
188センチと100キロの体で器用に操るパターの長さは、現在46インチという。
通常サイズの33〜35インチ前後に対して『長尺』と呼ばれるタイプのパターを選ぶ選手は慢性的な腰痛を抱えていたり、ストローク時に手が動かしづらい『イップス』という”ゴルフ病”が引き金になったりと、動機はさまざまだが、ノリスの場合は「長い距離のパットが苦手だったから」という。
2011年からバッグに入れた。当時は50インチの長さを操った。「左手1本で打つのを繰り返したり、とにかく練習した」と、努力で手に馴染ませていったが、岐路に立たされたのはその5年後。
2016年に、クラブの一部を体につけて打つ”アンカリング”という打法が世界ルールで禁止となり、ノリスも一度は長いパターを封印する覚悟はした
その最初の試合で初日に「66」を出した。色めき立ったのも一瞬で、すぐ2日目には「80」を叩いて予選落ち。
「これは、ダメだと」。
苦肉の策として、新ルールに合わせてシャフトが体と接触しないように、せめて4インチ縮めて再び長いパターをバッグに戻したのがたちまち魔法の杖に。
同年2月に亜枠で出場した日亜共同主管の「レオパレス21ミャンマーオープン」で、優勝。
日本ツアーのシード権を得ると、来日3年目の昨年から2年続けて今平周吾と賞金レースを繰り広げるまでに飛躍。
今年は、日本開催のラグビーワールド杯での母国・南アの勝利に合わせて今度こそはと相当、気合を入れたがまた負けた。
「彼のことを考えるとつい、感情的になってしまう」と今年は特に、7月に亡くした父を思って、最後もまた涙が出た。
今秋から、弟でプロゴルファーのカイルさんをキャディに転戦。ラグビーワールド杯の決勝時に合わせて家族も日本に呼び寄せ、”ワンチーム”を意識した2年連続の賞金レースだった。
「今度こそ、1位になりたいという気持ちは強かったが今年もまた、シューゴがなるべくして賞金王になった。私もベストは尽くした。悔いはない」。
今季の男子ゴルフを最後まで盛り上げてくれた、とJGTO会長の青木功に礼を言われて、さっき泣いたノリスがもう笑った。
「父を亡くした辛さを乗り越え、戦えたこと。父も誇りに思ってくれていると思う」と、パツパツの胸を張り、「もちろん、賞金王になれればもっと嬉しかったが、また来年もある。この悔しさを乗り越え、来年はもっと強くなって戻る」。
アイルビーバック。
帰りぎわ、シブい低トーンで繰り返したノリス。
最愛の家族とにぎやかな年越しに今ごろ、きっとノリノリ。