第1回は、開幕前日に行われた「チャレンジド・プロアマ」に参加した。
ティーチングプロの資格を持つ吉田隼人(よしだ・はやと)さんが、今年は本戦出場を果たすことになった。
昨年末に推薦出場の打診を受けて、2つ返事で出場を快諾したそうだ。
99年のJGTO発足以降の日本ツアーの単独開催試合としては、障がいを持つ方が本戦出場した例は他に見当たらず、まさにチャレンジドな挑戦。
昨年、障がい者ゴルフのオープン選手権で3連覇を達成し、海外での試合経験も豊富。今年はさらに世界ランキングを上げていこうと計画していた矢先のオファーだった。
「トレーニングにもいっそう気合いが入りました」と、昨年のプロアマ時から比べて体重は10キロ増。
飛距離も10ヤード超伸びたそうで、今は300ヤードを越えることもしばしばという。
昨年のプロアマ戦でも吉田さんと一緒にラウンドし、今年の本戦でも同組で回ることになった大会の地元福岡出身の時松隆光(ときまつ・りゅうこう)は、戦々恐々だ。初日の組み合わせ
「去年もめちゃくちゃ飛ばされてたんですよ・・・。今年はあれ以上に飛ぶんですか? やばい、マジで負けそうです」と、時松。
今季はこれまで7戦中4試合で予選落ちと、成績でもまだ満足いく結果を得ていない分だけ余計に不安そう。
吉田さんに「明日は宜しくお願いします」と、頭を下げられ「いや僕のほうが宜しくお願いします、です。僕より飛ばさないでくださいね・・・」と、本気で懇願していた。
24歳時のバイク事故で右足を失った吉田さんは、30歳からリハビリでゴルフを始め、今では障がい者ゴルフの世界ランキングの日本人トップに立つ。
本番に備えて本大会までに6回ほど下見ラウンドをされたといい、コース攻略の手応えはばっちり。
「昨年のカットラインの4アンダー以上で回ることと予選突破です」と目標を語る。
「ワクワク半分、怖さも半分」と、困難も承知の上。
「障がいがあると、調子が良い時と、悪い時の波がある」といい、「僕たちは義足を履くって表現するんですけど、日によって合わない時とか、感覚が違うなっていう時があって。いいなと思うときはスコアもいいし、履きづらいし、歩きづらいなと言うときは、ゴルフも悪かったりする。そういう悪い波が、大会の時に出るのが一番怖いな、と」。
予選2日間は雨予報のラウンドも、不安のタネに。
足場の悪さに加えて湿気が高い日に汗をかくと、義足に水滴がたまって余計に滑りやすくなるそうで、「本当は、一度脱いで拭き取るのが一番ですが、進行があるのでそういうわけにもいかないので」などと、障がいだらけに思える状況も、吉田さんが語るとどこか楽しげ。
「ワクワクは2つありまして、1つはテレビで見ていた憧れの舞台に立てること。あとは自分の実力がどれだけなのかというのを試せること。そういうワクワクがあります」と、ニッコリ。
キャディは、左上肢機能障害を持つ有迫隆志さんがつとめる。
「昨年のプロアマでは、時松選手に和やかムードを味合わせていただきましたが、今年は本気の気持ちが入ったショットを間近で見させていただけることになり、いい経験、いい勉強をさせていただけることに感謝しかない」という吉田さん。
「そういうチャンスがあるなら僕らも頑張ろうと、糧にしてくれる人が増えるんじゃないか」。
多くのチャレンジドのみなさんの夢と希望を背負った挑戦が始まる。