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日本オープンゴルフ選手権 2023

頑張るものは報われる「僕は日本で!」岩﨑亜久竜がさまよい、たどり着いた日本一のタイトル

3打差の7位タイから出て、単独首位で戻ってきた18番。
右の林に曲げたティショットは、テレビ塔の介在による救済を受けてもまっすぐピンを狙えない。

左には池。

でも、岩﨑亜久竜(いわさき・あぐり)に、刻む選択肢はなかった。


ひとつ後ろの石川が大ギャラリーを引き連れ1差に迫っていたのは、16番バーディでの大歓声を聞いて知っている。

「遼さんを応援する人は多い。プレーオフになれば、アウェイみたいになり不利になる。ここで確実にバーディを」。


2打目のライは悪くなかった。

風は左から来ていた。
「それほどギャンブルショットではなかった」。
正面の松の木を避け4アイアンで迷わず池のほうに向いて構えた。
「風に乗せる感じで、右のバンカー狙って、20ヤードは曲げるつもりで、フェードをやりきる」と思い通りの弧を描いてボールは乾いた音を立てた。



2オン成功。

ミラクルショットと2パットのバーディ締めに、名門・茨木の18番グリーンは2度沸いた。



初メンバー入りしたプロ2季目の昨季。
勝てなくても9度のトップ10入りを果たして賞金3位に入り、その資格で今年、欧州・DPワールドツアーの権利を得た。


「最初は、もうちょっとできるつもりだった」。

だが実際は、そもそもどの試合も出場が確約されていたわけではなく「毎週、ウェイティングをしながら違う国、違う芝、違う気候に違うゴハン」。
時差もあり、想像を越えるしんどさ。


「予選通過も数えるほど」と、出場15戦でわずか3回(棄権が1)。
「少しずつ、自信を失い打ちのめされた」。

ついに出場できる試合も尽きて先月末に帰国したときには頬もこけ、体重は7キロ減
「以前の自分に戻れるか・・・」。


力尽きて戻った旅人を、わずか2週間で蘇らせたのはチームの力。
黒宮コーチや、飯田トレーナーが帰国後の会場に駆けつけ、「ばらばらだったスイングが本当にガラッと変わった。また去年みたいにコントロールできるようになった。万全の状態で臨めた」と感謝する。


今週、日本一を決める難コースでよぎったのは、「アグリ」と気さくに接しながら、スゴ技をいやというほど見せてくれた異国の選手たちの姿だ。

「向こうではみんなラフとか、ピン位置とか、本当に厳しい状況でもドライバーでぎりぎり攻めていったり、ミスしてもリカバリーしてくる」。

最後の18番だけでなく、8、9番共にピンの根元に落とした連続バーディや、13、14番でのしぶといパーセーブに欧州ツアーでの成果を見た。


ただ打ちのめされて帰ったのではなかった。
「頑張ってきてよかった」。
重ねた努力が日本一を決める舞台で報われた。



いつも目をかけてくれる大ベテランの谷口徹は、コースまで車で10分の自宅から駆けつけ、11番から観戦に加わり、18番では岩﨑がちょうどティショットを曲げたあたりに立っていたそうだがプレー後に、グリーンサイドで抱き合うまで知らなかった。

「ありがたいです、本当に・・・。僕のゴルフ界のパパ」。



2位に3回入りながらついに勝てなかった昨年末、谷口が教えてくれたV時の心構えのひとつが「優勝を意識するのは最後のハーフで」。

教え通りに冷静にゲームを運ぶ岩﨑にロープ際から何度も拍手を送り、「きわどいのもよく入れたし、最後もよく打った」と、褒めた谷口も感泣していた。


祝福に駆けつけた日大先輩の堀川未来夢(ほりかわ・みくむ)は「初優勝が日本オープンてすげーカッコいい!」と、ほれぼれしていた。

欧州・DPワールドツアーで苦楽を共にしてきた久常涼(ひさつね・りょう)は、3週前に「フランスオープン」を制したばかりだ。

「あのときは僕がリョウを祝福したんですけど、すぐ続けてよかったです。・・・僕は日本で!」と、やっと掴んだ初Vを噛みしめる。


欧州初制覇の久常(右)も駆けつけました!


「たくさんの人たちにおめでとう、と言ってもらえて人生で一番幸せ」。
日本でもどこでも、頑張る者は報われる。


湯本キャディもおめでとうございます、そしてお疲れ様でした


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