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つるやオープン 2002

「賞金王より、日々の積み重ね」

 ショットの乱調にも耐えぬいたディーン・ウィルソン

 出だしの、3連続バーディ。
 特に、2ホール目の2番パー3で、6番アイアンでのティショットの感触が良く、「失いかけていた自信」も若干は、取り戻せたものの、今週に入って、いきなり崩したショットの調子は、完全復調とはいかなかった。
 「ボールが、クラブフェースのいろんなところに当たって、右左、どちらに曲がるかも、予測がつかない…。最終日も、我慢の日に、なりましたよ」

 “山の原”は、ウィルソンにとって、初出場のコースだった。
 「視界の狭いフェアウェー、外せば、粘っこいラフ」
 1度でも外せば、ショットへの自信を、なくしてしまう。
 後で思えば、それが今週、「徐々に重なっていっただけなのかもしれない」とも、考えられたが、原因不明の乱調にはプレー中、最後まで、安心することはできなかった。

 15番ホールで確認したリーダーボード。
 同スコアで並んでいる選手が、谷口徹とわかった。
 漢字がまったく読めないウィルソンも、“タニグチ”の名前は、読めた。漢字と顔が一致する、数少ない選手のひとりだ。
 「彼は、攻撃的なプレーをするプレーヤー。開幕戦でも、61を出していたし、12アンダーくらいまでは、確実に伸ばすに違いない」
 強敵への警戒を強め、あとはとにかく耐えに耐え、苦しみながら掴んだ、勝利だった。

 昨年、ツアー3勝。賞金ランクは3位。
 母方の筋にルーツを持つ日本での、2002年度“キング”の座にも魅力はあるが、「あえて、そういう目標や夢は、持たないようにしている」という。
 「だって、目標って、必ずしも達成できるとは限らない。結果を意識するよりも、日々の試合を1つ1つ大事にこなし、一生懸命プレーするその積み重ねが、大事だと思っているから」
 静かに語るその姿が、かえって彼の意志の強さを、際立たせていた。

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