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宇部興産オープン 2001

「興奮してて・・・何も覚えていない」

ポーカーフェイスのディーン・ウィルソンさえ、熱くなったこの日のゲーム展開

 スィングリズムは、常に一定。
 どんなシーンでも動揺することはなく、顔色を変えない・・・。
 そんなウィルソンが、この日ばかりは、熱く燃えた。
 首位スタートの手嶋多一との一騎打ち。
 取って取られてのバーディ戦は、両者一歩も譲らない。
 次第にテンションが上がってきたウィルソン。ゲームが佳境を迎えるにつれ、作るガッツポーズも、だんだんと大きくなる。

 通算19アンダーで突入したバック9。
 この日、一番の見せ場は、14番パー4だった。
 7番アイアンで、ピン手前13メートルにつけたバーディチャンス。
 手嶋の目の前で、これをど真ん中から沈めてみせると、思わずコブシを、天に向かって突き上げていた。
 しかし、そんな自分の派手なパフォーマンスさえも、ウィルソンは「覚えていない」という。

 「・・・そんなこと、僕したっけなあ・・・?(苦笑)あの時はすごく興奮してて・・・まったく思い出せないよ(笑)」

 だが、喜びもつかの間。そのホール、すぐに手嶋に10メートルのバーディパットを入れ返された。
 続く15番も、6メートルを先に沈めたが、手嶋にも、5メートルを決められた。
 目と目をあわせて、ニヤリと笑い合う2人。
 激しいマッチレースに、ギャラリーも、興奮の渦に引き込まれていく。

 結局、勝負は17番の手嶋のダブルボギーで決着がついたが、「手嶋さんも、すごく良いプレーをしていたんです。なんだか、こんな形で決まってしまうのは、ほんとうに申し訳ない気持ちです」と敗者にも敬意を表したウィルソン。
 笑顔で健闘を称え合う2人に、大きな拍手はいつまでも鳴り止まなかった。

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